強烈なアピールだった。
2020年東京五輪で金メダルを狙う野球日本代表の4番候補にオリックス・バファローズの吉田正尚(まさたか)選手(外野手)が名乗りをあげた。
3月9、10日と京セラドーム大阪で行われたメキシコ代表との強化試合。この2試合(1勝1敗)で吉田は自身の打撃力と存在感をものの見事に見せつけた。まずは第1戦の第1打席。2死1、3塁で打席に向かった吉田は、2球目のストレートを簡単にセンター前にはね返し先制点を挙げた。この日は8回にもセンター前に運んで3打数2安打1打点の活躍。しかし、これくらいは彼にとって単なる名刺代わり。迎えた第2戦は、「吉田劇場」と言いたくなるほどの独り舞台だった。
ここでも勝負は第1打席。この日4番に入った吉田は無死満塁で打席に入る。前日と同じように打ったのは2球目だった。インコース低めの直球を捉えた吉田の打球は、あっという間にライトスタンドに突き刺さった。先制の満塁弾である。吉田は5回にもセンター前安打、7回にはチーム6点目となる犠牲フライも放ち2打数2安打5打点。2日間で5打数4安打6打点の大暴れである。
今回の侍ジャパンは若手中心のメンバーで編成されたが、吉田の存在感はずば抜けていた。稲葉篤紀監督が彼への評価を高めたことは言うまでもない。筆者が吉田選手を推す理由は、驚異的な成績だけのことではない。国際試合に強いそのプレースタイルを有しているからだ。五輪をはじめとする海外チームとの試合では、何よりも積極性が求められる。初めて対戦する投手ばかりだが、じっくり観察する時間はない。追い込まれると強烈なウイニングショットが待っている。初球から攻撃的にスイングできる姿勢がないと良い結果は残せない。その点吉田は、初球から相手に襲いかかっていくタイプだ。
メキシコ戦の快打はいずれも2球目を打っている。その姿勢が国際試合で力を発揮するための条件だ。吉田は青山学院大学時代から大学日本代表で4番を打ち、数多く国際試合を経験している。今回もそうした経験が生かされているのだろう。身長173㎝と決して大柄ではないが、どんな球でもフルスイングできる強打者だ。「任されたポジションでベストを尽くすだけです」と彼の発言はまだまだ謙虚だが、そのバットは、貪欲に代表入りを主張している。
写真提供:産経新聞
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