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こうしてヒット商品は生まれた! めがね米

緑色の「ウェリントンめがね」が長男、黄色の「ボストンめがね」が次男、赤の「ラウンドめがね」が末っ子という設定の「めがね米」3兄弟。クスっと笑ってしまうパッケージデザインのインパクトは大きい。2合(300g入り)各500円(税別)

福井市の中でも、「眼鏡のまち」として有名な鯖江市との市境近くに本社を置く福井精米。同社が生産農家や販売業者とコラボレーションしてつくった「めがね米」が、2016年の発売後にわかに注目を集め、その後堅実な売れ行きを維持している。ユニークな商品名とコンセプトでブームをつくったアイデアの源泉に迫りつつ、成功の秘訣を探る。

“眼鏡を掛けた人だけでつくった”という商品

甘みがある、ふっくらおいしい、もちもち感、新品種の……などは、コメの味を表現する際のキャッチフレーズとしてよく用いられる言葉である。何となくイメージはできるものの、違いがいまひとつわからない。その点、消費者にひと目で理解される表現で、静かなブームを巻き起こしたのが「めがね米」だ。

一体どんなコメかといえば、眼鏡を掛けている人だけでつくったコメだということ。「それだけ?」そう、それだけなのだ。といっても、100%福井県産コシヒカリで、等級は1等級、味度80点以上という「特A」ランクのコメである。しかし、そこをアピールポイントにせず、あえて製造者の“キャラクター”を前面に出したことが消費マインドを刺激し、2016年6月の発売時にSNSで話題となって、その後も年間製造量を完売する手堅い売れ行きを続けている。

「元は眼鏡愛好家向けのノベルティーグッズとして企画したものなんです。まさか、こんなに反響が出るとは思っていませんでした」と語るのは、福井精米社長の樋田光生さんだ。樋田さんもやはり眼鏡を掛けている。

事の発端は、樋田さんが知り合いの紹介で、後に同商品の販売を担当することになるWEB制作会社mgn社長の大串肇さんと出会ったことだ。大串さんは大の眼鏡好きで、雑談する中からこんな話が飛び出した。

「宮城県に『メガネ専用』という名の日本酒があるというんです。何でも蔵人全員が眼鏡を掛けていることから着想を得てつくったのだとか。そういうことなら米でもまねできるんじゃないかって盛り上がったんです」

こうして先に「めがね米」という名前が決まり、眼鏡のまち・鯖江市で生産されたコメで、生産農家も精米業者も販売業者も皆、眼鏡を掛けた人でつくることをコンセプトに、2015年秋ごろから製造に乗り出した。

発売日を「めがねフェス」に合わせて商品をお披露目

まずはコメ探しだが、福井県産のコシヒカリは、食味検査で毎年「特A」を取り続けているので、味に関して心配はない。しかし、生産農家を探すのに難儀した。眼鏡は掛けていても、「顔出しは嫌だ」と断られてしまうのだ。

何とか探し出した後、今度はパッケージデザインでも苦戦した。そもそもノベルティーグッズなので、容量は2合(300g)と少ない。そのためパッケージ裏面の説明書きの文字も小さくせざるを得ず、「これでは印刷できない」と言われてしまった。4カ月ほど試行錯誤を繰り返し、ようやくデザインが完成した。

「実は梱包にも手こずりました。少量のコメを自動計量して袋詰めする機械をわざわざ導入するわけにもいかず、全て手作業で行ったんです。しかも、作業は全員眼鏡を掛けている者だけに任せたので、手の空いた者が手伝うわけにもいかず、予想以上に時間がかかってしまいました」

同商品の発売は、当初から鯖江市で行われている「めがねフェス」と決めていたという。同イベントには市民や近隣の人だけでなく、業者や眼鏡愛好家なども多数来場するため、お披露目にはおあつらえ向きなのだ。イベント初日はあいにく雨で客足が鈍く、「まったく売れなかった」(樋田さん)そうだが、2日目になると面白がって足を止め、笑いながら買っていってくれる人が出始めた。

「元々売らんかなの商品ではないので、製作費を回収できればいいなという気持ちで、1袋500円という強気の価格設定にしました。それでもイベント中の3日間で、500袋ほど売れたのには正直驚きました」

調達力を生かしてさらなるコラボ商品に取り組む

それで驚くのは早かった。イベントが終わった直後あたりから、購入者がツイッターで思い思いに投稿し始めたのだ。その投稿に対して、ものすごい数の「いいね」やリツイートが付き、瞬く間に拡散した。

「大串さんはWEB制作をやっているだけあって、ツイッターの投稿を見たそばから、カフェのテーブルで通販用のサイトを立ち上げてしまったんです。サイトを見た各種メディアが取り上げてくれて、問い合わせや購入者が増えていきました」

こうして初期ロットでつくった1500袋は、新米が出回るころに完売した。その後も生産農家から仕入れる年間5トン分で商品をつくり、1年で完売というペースで売れ続けている。今ではネット通販のほか、道の駅やサービスエリア、使用する食材にこだわりを持つカフェなどにも卸しており、累計販売数は約4万袋に上るという。コメの仕入れ量が決まっていて増産予定がなく、業績への影響もほとんどないそうだが、「めがね米」をつくっている会社として同社の認知度は上がった。現に就職希望者が増え、他社から別のコラボ企画を持ち込まれる機会も増えたという。

「今回は『めがね米』でしたが、別に眼鏡でなくてもいいわけです。すでに、ある自動車会社とのコラボで、ノベルティー用に『ハイブリッド米』というのをつくりました。現在も別のコラボ企画が二つほど進行しています。当社の強みは調達力なので、これからも企画に合った米を仕入れて、世に送り出していきたいですね」と意気込む樋田さん。

現在、年間1%ずつ消費量が減少しているとされるコメ市場に、新たな風が吹くことを祈りたい。

会社データ

社名:福井精米株式会社

所在地:福井県福井市森行町5-15-2

電話:0776-38-1000

HP:https://fukuiseimai.co.jp/

代表者:樋田光生 代表取締役

設立:1976年

従業員:48人

※月刊石垣2018年12月号に掲載された記事です。

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