アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 輸送インフラとしてのバイクの行方

東南アジアで重要なインフラになったバイク、ベトナムでは緑vs赤の競争が激化している

ベトナムの大都市の道路といえば、雲霞のごときバイクの印象が強いが、その大群にも変化が起きている。昨秋あたりから目立っているのは「緑vs赤」の戦いである。「緑」は東南アジアを席巻する配車アプリの「Grab」、「赤」はインドネシアを支配する配車アプリの「Go-jek」がベトナムで始めた「Go-Viet」。

Grabは自動車の配車も行っているが、なんといっても緑のヘルメットで走り回るバイクが目立つ。そこにGrabに比べればまだはるかに少ないが、Go-Vietの赤いヘルメットが挑んでいる。ざっとみれば、ホーチミンを走るバイクの15~20台に1台は緑のヘルメットか赤のヘルメットだ。両社とも今、力を入れているのが日本のLINEデリマのような飲食店からのデリバリーサービス、Grabeatである。「Grab Food」というロゴの入った制服でバイクのハンドルに大きなビニール袋を下げたバイクもよく見掛けるようになった。食べ物以外にも大きな荷物を荷台で運ぶGrab、Go-Vietもある。

配車アプリとバイクの組み合わせはバイク天国の東南アジアのビジネスの輸送インフラとしてすっかり定着した。中国ではアリババや京東(ジンドン)が展開する生鮮食品スーパーの配送もバイクが基本。「注文から30分以内に自宅まで配達」という公約を守るには渋滞に巻き込まれても小回りが利くバイクがベストの選択だからだ。バイクが個人だけでなくビジネス利用に広がれば、雇用創出の面でも大きな力を持ってくる。問題は国民の経済水準が上がり、自動車への転換が加速したときだ。

アジアでは1人当たりの国内総生産(GDP)が2500ドルを超えると自動車の普及が始まるといわれる。タイ、中国の経験では6000ドルを超えると自動車の所有がぜいたくではなく、当たり前になる。中国では北京や上海、広州はじめ大都市の多くが市内中心部でのバイク利用を禁止する「禁摩城市(中国語でバイクは摩托車)」で、それが自動車購入促進策にもなっている。もちろん自動車でも配達や人員輸送はできるが、コストではバイクに到底かなわない。さらにバイクが自動車に代わると道路渋滞は深刻化し、二酸化炭素排出量も増加する。日本でも最近、個人宅への輸送のボトルネックが問題になっている。都市の輸送インフラ、とりわけ「ラストワンマイル」問題の解決はバイクの生き残りで図るのか、開発が進む「無人自動搬送機」になるのか、アジア都市の今後に注目したい。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門
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