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コラム石垣 2014年6月1日号 神田玲子

2040年までに自治体の3割が消滅するという予測が世間をにぎわせている。それを防ぐためには、東京への一極集中を是正すべきだというが、果たして可能なのか。人が東京に集まるのは働く場を求めるからであり、それを無理に地域に引きとめようとしても効果は小さい。引きとめるのではなく、人の移動を促すことで地域の活性化を図るべきだ。

▼長野県飯田市は、南アルプスの麓にある人口約10万人の小さなまちだ。この地域で産業を活性化させるために奮闘しているのは、他の地から移ってきたシニア層。そのうちの一人である松島さんは、飯田市にあるシチズン時計の子会社に常務として赴任し、退職した後も飯田市に残り、地域の産業振興に取り組んでいる。

▼人々の心の素朴さに触れ、何とかこの地で雇用を維持したいという思いを強くし、工場での首尾一貫生産を実現することで、雇用の維持に成功した。その経験を地域の産業振興に生かし、地元を航空宇宙産業のクラスターとして発展させるための取り組みを続けている。週末には、野山を散策し、祭りが開かれるのを楽しみにしているという。そこには、地域の人々や自然を愛し、地域とともに生きていこうという姿がある。

▼日本には、松島さんのようなシニア層が潜在的に数多くいるのではないか。東京の騒がしさから逃れ、自然の豊かな地域で新しい生活を始めることが「クール」に感じるシニアが増えているのかもしれない。そんなシニア層を地域に結び付ける上で、商工会議所が果たす役割は大きいのではないだろうか。民間企業と地域との長年のネットワークを有しているからこそ、シニア層を地域につなげることができるはずだ。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査部長)

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