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まちの羅針盤 vol.4 ローカルファーストの視点で

家計消費支出動向 (出典:総務省「家計調査」(家計収支編)より」筆者作成)

新型コロナウイルスは、これまでの人々の価値観や行動様式を変え、ニューノーマル(新常態)を生み出すといわれている。また、ウィズコロナで長引く移動自粛がオンラインツールを発展・普及させ、過密の解消と相まって東京一極集中を是正し、地方創生が推進されるとの意見もある。

今回は、こうしたアフターコロナ時代(コロナ禍に伴う大幅な移動自粛などの緩和後)における地域づくりの方向性について検討したい。

地域の商いの拡大を

日本商工会議所では観光振興と第1次産業の活性化を地方創生実現の切り札と位置付けている。それは、地域に経済の好循環を生み出すからである。

観光は、域外からの誘客に目が向きがちであるが、大事なことは地域の消費(地消)を拡大させることである。第1次産業の活性化も同様で、おのずと産出される資源を活用(地産)することで地域に残る所得を増やすことができる。また、地域固有の歴史や文化を色濃く反映するため、地域ブランドを向上し、地消の拡大を助けることにもなる。

今後、多かれ少なかれ、ヒト、モノの移動には制約が生じるが、カネはその壁を超えることができる。オンラインツールの発達によってその差は拡大するであろう。だからこそ、今後の地方創生には、地消と地産で地域の商い(地商)を拡大する、新たなカネの循環を生み出そうとする視点がますます重要となる。

2020年3~4月の家計消費支出では、外食や旅行が大幅に減少する一方、生鮮野菜などが増加している。こうした変化が定着するのか、見方が分かれるが、筆者は、長期的なトレンドは維持されると考える。そもそも漸増傾向にあった生鮮食品は、今後もローカル消費の中心として成長するのではないか。旅行も、バブル崩壊後は底堅く推移しており、時間は要するが、国内旅行は相応に回復するであろう。インバウンドはどうか。世界の国際観光客数は経済規模の拡大に比例しており、まずはトラベルバブル(安全と認識された近隣国間の旅行)からにしても、長期的には今後も増加するのではないか。ただ、それが訪日外国人の回復・増加につながるかは別問題である。少なくとも感染症対策を含めた安心安全への取り組みとその情報発信を、来訪者のみならず、地域住民に対しても行っていく必要がある。

住んでよいまちに

テレワークは、各種調査から、東京での実施割合が高く、規模の大きな企業に偏っている現状が分かる。本社機能が集まるなど適した職種が東京に多いことも要因であろう。ただ、場所にとらわれない以上、実は地方である必要もない。東京近郊でのテレワークと何が違うのか。結局、そこに住む人たちが誇りを持てるような魅力・ブランドがある地域でなければ、テレワーク需要も呼び込めない。この点、選ばれる観光地の条件と基本は同じではないか。

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標の一つに「魅力的な地域をつくる」ことが掲げられた。その実現には、地消と地産の拡大に取り組み、地域に多くの種類の仕事を増やすことに尽きる。地域に経済の好循環を生み出そうとする「ローカルファースト」の精神こそが、今後のまちづくりの基本となる。

和歌山商工会議所青年部(YEG)では地域を守る消費活動を促し地域の魅力アップにつなげる「BUY LOCAL」を展開している。日本商工会議所の地域飲食店応援クラウドファンディング「みらい飯」をはじめ、飲食店などを支援してまちのにぎわい基盤を守ろうとする取り組み、また、国土交通省が進める「ウォーカブルシティ」も、その目的は地域課題の解決や新たな価値の創造であり、まさにローカルファーストな活動といえよう。

本連載では、アフターコロナ時代だからこそ重要となるローカルファーストの視点で、まちの価値を高めるための具体的なヒントを検討してまいりたい。

(DBJ設備投資研究所経営会計研究室長、前日本商工会議所地域振興部主席調査役・鵜殿裕)

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