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テーマ別誌上セミナー 気付かぬうちに重症化 元気な人ほど危ない夏バテ!!

福田 千晶(ふくだ・ちあき)

医学博士 健康科学アドバイザー

福田千晶(ふくだ・ちあき) 医学博士 健康科学アドバイザー 昭和63年慶應義塾大学医学部を卒業後、医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学科勤務を経て平成8年よりフリーランスの健康科学アドバイザーとして、講演、執筆、テレビ・ラジオ番組への出演などで幅広く活躍。また、医療機関などで診察を担当するほか、産業医として企業の健康管理や健康啓蒙にも携わる。主な著書に『ホントはコワイ夏バテ51の対策』(日東書院本社)、『明日、突然倒れないための強い血管の作り方』(永岡書店)、『40代からはじめるもっと太らない体づくり』(笠倉出版社)など多数

夏の暑さが苦手という人は多いのではないだろうか。その一つが夏バテによる体調不良なら、今からしっかり対策を立てることが肝心だ。体力に自信のある人も、あまり自信のない人も必読の夏バテ予防法を取材した。

知らず知らずのうちにやってくる怖い体の不調

いよいよ夏本番。これからの時期に注意したいのが、夏バテだ。「たかが……」と侮ってはいけない。知らず知らずのうちに忍び寄り、体調や意欲の低下を招いて仕事のパフォーマンスを下げるほか、思わぬ事故を引き起こしたり、最悪の場合は命に関わる可能性もある。そうしたリスクを回避するために、夏バテの原因とメカニズムについて、健康科学アドバイザーの福田千晶先生に聞いた。

水分不足と消化機能低下……そして自律神経の乱れ

気温の上昇とともに、「何となく体がだるい」「食欲が湧かない」「やる気が出ない」といった状態に陥る人は結構いるのではないでしょうか。これらは代表的な夏バテの症状ですが、そのメカニズムは意外に知られていないようです。そもそも夏バテとは正式な病名ではなく、はっきりとした定義があるわけでもありません。

では、どうしてこんな症状が現れるのでしょうか。その要因としてまず挙げられるのが、水分・ミネラル(ナトリウム)不足です。人間は体温が36~37℃に保たれていることで、スムーズに活動できるようプログラムされていますが、気温が上昇すると体温も上がってしまうので、汗をかくことで下げようとします。しかし汗は、体内の水分と一緒に必要なミネラルも排出してしまうため、気付かぬうちに脱水状態になり、体に異常をきたすのです。

また、消化機能の低下による栄養不足も大きな要因。暑さで胃腸の働きが悪くなり、食欲が落ちて、たんぱく質やビタミン・ミネラルといった体に必要な栄養が十分に取れなくなるのです。しかも、冷たい飲み物や食べ物を取りすぎると、胃腸が冷やされてますます働きが悪くなり、食欲不振を招くという悪循環に陥ります。

かつて夏バテといえば、こうした水分不足と消化機能の低下が主な要因でした。しかし現代では、暑い屋外と冷房の効いた室内を行き来することによる自律神経のバランスの崩れが加わるのが大きな特徴といえるでしょう。自律神経は体温や内臓機能の調節という重要な働きをつかさどっていますので、体に大きなダメージを与えるのです。

生活習慣と持病がリスクを左右

こうした要因がからみ合って起こる夏バテですが、なりやすい人とそうでない人がいます。一般的には、体温調節機能が衰えた高齢者ほどハイリスクといえますが、体質的に胃腸の弱い人や虚弱体質の人、冷え症であまり汗をかかない人などは年齢にかかわらずなりやすいといえるでしょう。

生活面では、疲れがたまっていたり、寝不足気味な人は、自律神経の働きが低下して気温への順応性が悪くなっています。朝食を抜く習慣のある人も、前の晩から何も食べていないことになるため、必要な栄養が補給できないだけでなく、食事に含まれる水分が取れません。そのため、「疲労+睡眠不足+朝食抜き」の三拍子がそろったら、若く体力のある人でも夏バテ予備軍といえます。

また、日常的にアルコールを飲む人も要注意。アルコールには利尿作用があるほか、発汗も促すので、思った以上に水分が失われます。ビールなどは飲んだ量と同じくらいの水分が排出されてしまうこともあるほど。暑い日は冷えたビールで喉をうるおしたい気持ちも分かりますが、アルコールは水分ではないことを肝に銘じておきましょう。

配送や建設作業など長時間屋外で仕事をする人、営業などで屋内と屋外を頻繁(ひんぱん)に行き来する人などは、隠れ脱水(左記)になる恐れがあります。逆に閉め切った部屋での作業が多い人も同様です。

さらに注意してほしいのが、持病のある人。具体的には尿量が増える糖尿病、血液循環のよくない心臓疾患、排泄(はいせつ)機能が低下する腎疾患、疲れがたまりやすい肝臓疾患、汗をかきやすい甲状腺障害などの病気です。また、病後などは、夏バテにとどまらず熱中症(左記)など命に関わる症状を招くリスクが非常に高いといえます。

こうしてみると、意外に多くの人が夏バテと隣り合わせであることが実感できるのではないでしょうか。

予防対策で転ばぬ先の杖

とはいえ、具体的な症状が出るまでは、夏バテをなかなか意識しにくいものです。具合が悪くなるまで無自覚というケースも少なくありません。しかし、夏の暑さはこの先まだまだ続きます。今は何ともなくても、暑さによるダメージは体に蓄積されていきます。体調管理は個人の責任ですが、1日で最も長い時間を過ごす職場でも、夏バテ対策を講じておかないと思わぬ事故やトラブルに見舞われる可能性があります。

例えば、夏バテ気味で体調が優れないまま仕事をしていれば、仕事の能率が落ちたり、普段はしないようなミスも増えるでしょう。仮に取引先でミスを犯せば信用問題にもなりかねません。

また、職場環境によっては、気付かぬうちに脱水症になり、突然体調を崩すことも。特に、持病のある人は脱水症になりやすいため、普段と変わらないペースで仕事をすると、オーバーワークになりがちです。それで倒れるようなことにでもなれば、労災になるおそれもないとはいえません。

そうならないためにも、今の時期から会社を挙げて夏バテ対策に取り組みましょう。それは社員の健康管理になるだけでなく、一人ひとりが意欲的に仕事に取り組み、持てるパフォーマンスを発揮できる環境づくりにもつながるはずです。

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