事例3 ネットショップだからこそのプラスαを
リリーアンドデイジー(大阪府吹田市)
ベビー服や子ども靴のインターネット販売を行っているリリーアンドデイジー株式会社は、今年で創業5年。代表取締役の麻生満美子さんは、昨年10月に開催された第46回全国商工会議所女性会連合会の神戸総会で「第13回女性起業家大賞」最優秀賞(日本商工会議所会頭賞)に選ばれた。麻生さんがこのビジネスを始めたきっかけは、結婚・出産後の再就職の厳しさに直面したことだった。
「これなら私にもできる」
麻生さんが再就職しようと思ったのは、長女が1歳になり、子育てが一段落したころ。出産前まで企業で12年間働いており、その経験を生かせる仕事に就けたらと考えていたという。
「私はいわゆる晩婚・高齢出産で、娘が生まれたときはもう30代も終わりのころ。再就職しようとしても現実はなかなか厳しく、子育てしながら働けそうな仕事は見つかりませんでした。そこで思いついたのが起業することだったのです」
しかし、自営業などの経験がなく、自宅は住宅街にあるためカフェや雑貨屋にするわけにもいかない。何かの教室を開くにも、人に教える能力や知識もほとんどなかった。考えが行き詰まっていたときに思いついたのが、ネットショップだった。
「私はよくネットでベビー用品を買っていたのですが、リサーチしてみると、オークションサイトに個人で出品している人が多く、海外から個人輸入して売っている人もいました。これなら私にもできるのではないかと思い、それで初めてベビー服や子ども靴のネットショップをやってみたいと思うようになりました。ネットショップなら実店舗を構えるより開店資金もずっと少なくて済みますから」
取り扱う商品は、海外ブランド製にすることにした。国内ブランドの子ども靴は地味な色合いが多く、ネットショップで売られているのは安価なものばかりだったからだ。
「一方で、海外ブランドはカラフルでデザインもかわいく、素材や縫製にも優れていました。しかも、それをオークションなどで個人で売っている人はいても、お店として扱っているところがそれほど多くありませんでした。それで、私と同じく育児に追われるママさんたちが、上質で機能性に優れた子ども靴を気軽に買えるようにして、子ども靴の正しい選び方や履き方を〝足育〟として伝えていこうと決心したのです」
独自ドメインの弱点とは
リサーチや準備には半年の時間をかけ、ネットショップ開設支援サイトを利用して独自ドメインのショッピングサイトを開設。商品の仕入れは海外ブランドからネットを通じて購入しようとしたが、日本のクレジットカードが使えないところもあり、購入代行サービスを通じて輸入した。
「毎月10万円くらいの利益が出ればと思って始めたのですが、最初の半年はほとんど売れず。でも、3年はやらないと結果は見えてこないと思い、頑張ってきました。それから少しずつリピーターが増えて、お客さまへの対応をしていくうちに、ネット販売は自動販売機じゃない、顔が見えないからこそ接客が重要なのだと気付きました。ネットショップであってもお客さまに丁寧な対応をすることで、お客さまがいいレビューを書いてくださり、それが励みにもなりました」
そしてもう一つ気付いたのが、独自ドメインのネットショップでクレジットカードを使うことに抵抗感がある人が多いこと。大手企業ではないので、まだそこまで信用を得ることは難しかったのだ。
「3年たってリピーターは増えてきたものの、売上は横バイ状態。やはり小さいサイトでは難しいのかなと感じていたころ、大手ショッピングサイトから出店のオファーが来たのを機に、そちらにショップを移しました。そこならお客さまも安心してクレジットカードで購入してくれますから」
すると、それまで月平均の売り上げが50万〜60万円だったのが、すぐに100万円、そして200万円にと倍々で増加。大手ショッピングサイトの信用と集客力のすごさを知ることになる。
「それまでは仕入れから接客、梱包、送付まで一人でやっていたのですが、忙しくなったので夫にも空いた時間に梱包などを手伝ってもらうように。それでも間に合わなくなってきて、スタッフを雇用するようになりました」
人間味ある接客を心掛ける
売上が増え、ネットショップの注目度が上がるにつれ、リリーアンドデイジーの取り扱い商品を模倣するところも数多く出てくるようになる。このままではそういったネットショップの中に埋もれてしまう可能性もあった。
「そんな中で私どもを選んでいただくには、何かプラスαが必要でした。そこで、お送りする際のギフトラッピングを無料提供したり、注文を受けたらどこよりも早く送るなど、いろいろなアイデアを出して実行していきました」
そうしたなか生まれたヒット商品が、赤ちゃんが生まれて初めて履く〝ファーストシューズ〟を額のようなガラスケースに入れ、成長して履き終えた後も永久保存できる「メモリアルボックス」。手づくりのシルクフラワーブーケに赤ちゃんの名前と生年月日が入ったプレートも付け、インテリアとして飾っておくことができる商品だ。
また、小さい子どもは成長が早く、新しく買った靴が数カ月で履けなくなってしまう。そのため、靴を買う際のサイズに悩んでいる顧客の相談にはとことん乗り、まるでお店で買うのと同じような対応を心掛けているという。
「これからは少子化がさらに進んでいきますが、それはむしろチャンス。私もそうでしたが、子どもが一人だと、高くても良い物を子どもに与えたいと思うようになる。私どもが扱っている製品はそういった方々がターゲットですから。また、これからはインターネットが使えるお年寄りの方々が増え、ネットショッピングでお孫さんのために何かを買ってあげる人も増えてくる。そういった状況の変化に対応しながら、人間味のある接客をさらに心掛け、ビジネスを展開していきたいと考えています」。麻生さんの挑戦は緒に就いたばかりだ。
会社データ
社名:リリーアンドデイジー
住所:大阪府吹田市佐竹台4-6-13
電話:06-6871-5823
代表者:麻生満美子 代表取締役
従業員:2人
※月刊石垣2015年8月号に掲載された記事です。
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