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テーマ別企業事例 中心市街地「活性化」に秘策あり

人の流れが変わり、人影がまばらな「シャッター通り」となった中心市街地に、かつてのにぎわいを取り戻すための試みが全国各地で始まっている。今号は、非常に難しい、この課題解決に取り組む最前線をレポートする。

総論 もともと持っている魅力を磨き上げるべき

足立 基浩(あだち・もとひろ)/和歌山大学経済学部教授

衰退の進む地方都市の中心市街地。商店街は1年間に全国で約200が消滅しているといわれ、空き店舗率は14・62%(平成24年時点)と10年間で倍増。「シャッター通り化」に歯止めのかからない状況が続いている。かつてのにぎわいを取り戻すには、どのような発想と工夫が必要なのか。土地経済学を専門とする和歌山大学教授の足立基浩さんに話を聞いた。

足立 基浩(あだち・もとひろ) 1968年、東京都生まれ。和歌山大学経済学部教授。 慶應義塾大学経済学部卒業後、新聞記者を経てイギリスに留学。2001年ケンブリッジ大学大学院土地経済学研究科にて博士号を取得。国内約300カ所、海外約15カ国での調査をもとに、全国のまちの活性化に向けて、経済学や経営学の理論と現場とをつなげるまちづくり論を主に研究している。大学で教壇に立つ一方、2005年より和歌山市の中心市街地活性化事業にも取り組む。主な著書に『シャッター通り再生計画―明日からはじめる活性化の極意』『イギリスに学ぶ商店街再生計画―シャッター通りを変えるためのヒント』(ともにミネルヴァ書房)ほか多数。

基本理念は「三つのS」

そもそも私が中心市街地の問題に関心を持ったのは、イギリスで元気な商店街を目の当たりにしたのがきっかけでした。社会制度が日本と似ていて、郊外型店舗が数多く存在しているにもかかわらず、私はシャッター通りを見かけたことがほとんどありませんでした。ならば、同じように日本の商店街も再生できるはず、と確信を持つようになったのです。

商店街再生のためには、私は「三つのS」がキーワードになると考えています。第一のSは、「センチメンタル価値」、地域性重視の個性創造です。これはまち固有の歴史や文化、祭り、古い建物や風情など、地域の人が愛着を持っている魅力をより高めることです。

日本の都市開発では経済原則や効率性が優先されてきた結果、収益性の高い商業ビルやオフィスが建ち、どこも似たようなまち並みになってしまいました。今一度立ち止まり、まちのセンチメンタル価値に着目して磨きをかければ、地元の人にとって愛されるまちになるでしょう。さらにそれを外向きに磨くことで、観光客を呼ぶこともできるはずです。

第二のSは、「サーベイ」、状況診断です。医師が患者を治療する際、検査をして症状を見極めるように、まちの経済状態や疲弊の度合いなどを正確に把握することが欠かせません。その方法として、まちの外部環境と内部環境を、強み、弱み、機会、脅威の4つのカテゴリーで分析する「SWOT分析」や、人口規模、大都市との距離、観光地になり得る可能性、郊外型店舗の規模や影響などを検討する「地域診断」が有効です。

第三のSは、リスク管理「セキュリティー」。まちは時代の変化に対応しなければ衰退してしまいます。変化はリスクを伴うもの。いかにリスクを予想して、冷静に対応するかが結果を左右します。

ほかにもさまざまな要素が存在する中、この三つのSの視点が重要と考えるのは、私が実際に訪れた300以上の中心市街地での調査や経験から得た結論です。

まちをよみがえらせるために

具体的にまちを再生させる手法として、大きく分けて四つの手法が挙げられます。まち並みや建物の外観を整備する「コンバージョン型」、新しいまちに生まれ変わる「再開発型」、交通機関や住宅整備など行政が主体となる「行政主導型」、そしてイベントや特産品などソフト面でブランド価値を高める「現状維持型」です。

事例を見ていきましょう。まず、コンバージョン型で成功したのが、大分県豊後高田市です。同市は近隣の主要都市から日帰りできる距離にあることと、昔懐かしい風情を生かして、商店街に「昭和のまち」を再現しました。レトロな雰囲気は多くの人の郷愁を誘い、平成13年には年間約2万5千人だった観光客が、19年には約36万人へと飛躍的に伸びました。興味深いのは、住民参加を促しながらまちづくりを行った点です。地元愛に根差したセンチメンタル価値を具現化した好例といえるでしょう。

再開発型では、香川県高松市の丸亀町商店街が有名です。同商店街は地方都市には珍しく、海外高級ブランドをはじめ多様な店舗が集積しています。この強みを生かし、テーマごとに七つの街区が並ぶ商店街へと全体をリニューアルしました。中心市街地の複雑な土地問題を克服し、まちづくり会社による商店街一括運営が奏功し、郊外型店舗に奪われた客足が戻って歩行者交通量がV字回復。商店の大幅な売上増につながりました。

行政主導型の成功例としては、福島県福島市の大学誘致、富山市における路面電車(LRT)の整備などがあります。これは、大都市から離れた非観光型のまちに向いている手法といえます。

商店街は〝観光地〟

そして全国の現場でもっとも多く採用されているのが、現状維持型でしょう。これはハード面を変えず、イベントや祭りの開催、特産品・土産物の開発、抽選会やポイントカードの導入といったソフト面を工夫する手法で、低予算・低リスクであることから、人口規模や地理的要件を問わず、全てのまちで応用することができます。例えば、青森県八戸市では水産都市という地の利を生かして、新鮮な海の幸と、それを食べられる市場や朝市を観光資源としてPRしたことで、利用客の大幅増を果たしました。私も関わっている和歌山市では、和歌山大学の学生や市民ボランティアが主体となって、歩道や広場でオープンカフェ、商店街の空き店舗でレンタルカフェを運営していますが、地元の人たちに好評で、付近の回遊性が向上しました。予算を掛けられないところにおすすめの手法といえます。

これらの成功例に共通しているのは、地域の特徴を見極めた上で、個性や魅力を引き出していること。つまり、センチメンタル価値を上手に形にしているのです。もし、「自分のまちには何の特徴もない」と思うなら、「商店街は観光地」という視点を持ってください。古くからある商店街はまちの資源であり、その個性や魅力を再確認することが、活性化への突破口になります。

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