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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 美しいフォームで世界一速く歩く 競歩の鈴木雄介選手に注目

石川県能美市で開催された陸上全日本競歩能美大会(兼)世界選手権代表選考会(3月15日)。ここで偉大な記録が樹立された。ご当地出身の鈴木雄介選手が、これまでの記録を26秒上回る1時間16分36秒の世界新記録(男子20㎞)を打ち立てたのだ。前日には北陸新幹線が金沢まで開通。その翌日に陸上競技で世界新記録が誕生したわけだ。日本人男子の世界記録更新は50年ぶりの快挙。新幹線の名の通り、まさに「かがやき」を地元にもたらした。

陸上競技の数ある種目で競歩が注目されることはまだまだ少ない。それは鈴木選手も常々意識していることなのだろう。世界記録を出しても「くねくねしているとか、ばかにされても、笑われてもいい。まず見てもらえれば」と競技の宣伝も忘れなかった。しかし、今回の鈴木選手の世界記録によって競歩への関心は一気に高まることになるだろう。それは、この偉業によって鈴木選手がこれまで以上にメディアに取り上げられる機会が増えることももちろんだが、もう一つの要因は、いま本当に多くの人が歩くことに興味を持っているからだ。

成人を対象にした『スポーツライフ・データ2014』(笹川スポーツ財団)によると、世代を問わず、いま最も親しまれている運動&スポーツ(複数回答)の1位が散歩(33・0%)であり、2位がウオーキング(25・7%)なのだ。推計人口は3426人と2668人になる。また、今後行いたいスポーツにも男女を問わず散歩とウオーキングが最上位にきている。つまり、いま最も関心が高く、そして最も多くの人が取り組んでいるのが、歩くことなのだ。そこに届いた競歩のビッグニュース──。

鈴木選手のフォームは、世界一美しいと言われている。競歩では、歩型が厳しくチェックされる。必ず片足が地面に接地していなくてはいけないし、膝が曲がっていてはいけない。要するに走るように歩いてはいけないのだ。毎回、歩型違反で失格になる選手が多い中、鈴木選手はこれまで一度も失格になったことがない。それだけ理想的なフォームで歩いているのだ。

世界一美しいフォームで世界一速く歩く。そんな選手が「国民総ウオーキング時代」のような環境で、スターにならないはずがない。これからは鈴木選手の時代であり、競歩が大注目の種目になるだろう。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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