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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 活躍を続ける横綱白鵬をつくったもの

大相撲初場所。横綱・白鵬が昭和の大横綱・大鵬を超える33回目の優勝を15戦全勝で飾った。これで白鵬の優勝回数は歴代1位となり、今後はどこまでその記録を伸ばすかに注目が集まることになった。

去年の九州場所。大鵬に並ぶ32回目の優勝を成し遂げた白鵬は、土俵下でテレビのインタビューに答えて言った。 「14年前、62㎏の小さい少年がここまで来たのは、誰も想像してなかったと思います。この国の魂と相撲の神様が認めてくれたから、この結果があると思います」

私は白鵬のその言葉を聞きながら、人間の持つ可能性と、その意志の大切さについてあらためて考えさせられた。当たり前のことだが、最初から横綱だったり、プロ野球の4番だったり、サッカーの日本代表だったりする人はいない。

アメリカのメジャーリーグで活躍を続けるイチロー(今季からマイアミ・マーリンズ)が常々言っているように、大きなことを成し遂げるためには、目の前の小さなことを一つひとつ積み上げていくしかないというわけだ。

現在身長192㎝、体重158㎏という白鵬も、来日当初は自身が言うように、62㎏のひょろっとしたバスケットボールが大好きな少年だった。あまりにも痩せているために、いくつかの部屋で入門を断られ、拾われるように決まったのが宮城野部屋だったというのはとても有名な話だ。

今の白鵬をつくったのは何か? それは稽古以外に何もないだろう。来る日も来る日も稽古に明け暮れて、少しずつ体を大きくして、技を磨いていく。そしてそのときに大切なことが、その国の伝統や文化、習慣をしっかりと受け止めて吸収しようとする態度なのだ。 「この国の魂と相撲の神様……」は、きっとどこの地域にも、どんな仕事にも、いかなる職場にも、それはあって、あるいはいて、何事もそうしたものに認められるように取り組むべきなのだろう。

それは精神論や宗教観の話ではない。どんなことにも学ぶべき基本があって、それを極めるために真摯に先達に教えを乞う謙虚さのことなのだと思う。そして、この横綱が恐ろしいのは、これだけの優勝を飾りながらも、まだまだ強くなることに貪欲であり続けていることだ。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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