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スポーツライター 青島健太の注目アスリート “いつも”の状態で戦えること〜高梨選手の強さの秘密

正確で抜群の技が持ち味の高梨沙羅選手 写真提供:産経新聞

スキージャンプ女子の高梨沙羅選手がW杯通算50勝目を達成したのは、1月29日、ルーマニアのルシュノブで行われた個人第12戦だった。2本5目にはこの日の最長不倒97・5mを飛んで貫録を見せつけた。しかし、高梨のすごいところは50勝が単なる通過点にすぎないことだ。その後も連勝を重ね、これを書いている2月8日現在、52勝を記録している。50勝を目前に今季は札幌大会から5戦連続で未勝利があったが、それでも14戦を戦ってもうすでに8勝をマークしている。表彰台に上がれなかったのは2回だけだ。

ところがこれだけの成績を上げながらも高梨は自分のジャンプにまったく納得がいかないというコメントを残し続けている。例えば第14戦オーストリア・ヒンツェンバッハの優勝後も笑顔のないインタビューだった。

「この勝利に私自身は驚いています。イメージと現実がしっくりきていない。技術的に混乱している中で勝てたことは良かったのですが、この後に向けてしっかり調整したいと思います」

そう、勝っていながら高梨選手の機嫌が悪いのだ。彼女によれば、今シーズン勝てなかった1月ごろからその混乱がずっと続いている……と。しかし、そんな状態の中にあっても勝ってしまうところにこそ、彼女の強さの秘密があるのだろう。

彼女の持ち味は、何といっても正確な飛び出しと抜群の空中テクニックにある。それでも飛び出しのタイミングがズレるときがある。そんなときでも慌てることなく風をつかんで無駄のない空中姿勢でK点越えまで持っていってしまう。つまりたとえミスがあっても高い技術でそれを補ってしまうのだ。そうでなければキャリア85戦にして50勝という偉業は達成できない。

また、どんな国へ行ってどんな状況でも普段通り戦える環境を彼女自身がつくってきた。高校は北海道旭川市のインターナショナルスクールを選び、英語を学ぶことで余計な緊張やストレスを感じないように準備をしてきたのだ。前述のオーストリアでのインタビューも英語で答えた内容だ。

調子が悪くてもなんとかする。本当に強い選手とはそういうものなのだろう。目指すはもちろん来年に迫った平昌(ピョンチャン)オリンピックでの金メダルだ。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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