雪と氷の祭典、冬の五輪。ロシア共和国ソチで行われた今回の大会も数々の記録とドラマを残して幕を閉じた。
日本が獲得したメダルは合計8個。金メダルが期待された女子ジャンプの高梨沙羅選手やフィギュアスケートの浅田真央選手が無冠に終わったことは、選手本人が一番悔しがっていることだろうが、あらためて五輪という舞台で、普段通りの力を発揮することの難しさを知る機会ともなった。
思い出す名場面や興奮を覚えたスリリングなシーンは、人それぞれあるだろうが、私は浅田真央選手の永遠のライバル、韓国のキム・ヨナ選手が残したこんな言葉が心に残った。
それは銀メダルに輝いた女子シングルの演技がすべて終わってからの記者会見でのこと。前回のバンクーバー五輪で金メダルを取っている彼女が、「バンクーバーとソチでは、何が違ったか?」と尋ねられたときだ。
「バンクーバー大会と違ったのは、当時の私は金メダルのために死ぬ覚悟で臨んでいたこと。その気持ちと強い信念はもうありませんでした。そういった意味で、モチベーションを保つことが自分にとっての課題だったと思います」
何よりも驚かされるのは、「死ぬ覚悟で……」という五輪に向かう姿勢の厳しさだが、そんな彼女でも目標(金メダル)を達成してからは、モチベーションを維持することが難しかったと言っているところだ。
これは私たちの日常にも大いに当てはまることだろう。仕事や勉強も目標や目指す理想があるからこそ頑張れる。それが曖昧だと力が集約できない。そしてさらに難しいのは、目標を達成してしまったその後のことだ。
次の目標をどう定めるか。そこが上手く設定できないと、キム・ヨナ選手でもモチベーションの維持が難しかったというのだ。
何事も目標を立てて真っ直ぐに進むことだけを考えてしまうと、それはそれで堅苦しくなってしまうが、目標があるからこそやる気や意欲が喚起されるということは、私たちの本能であり生理でもあるのだろう。
「仕事ができる人」とは、「目標を上手く定められる人」ということかもしれない。
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