Q 最近、よく仮想通貨という言葉を耳にします。仮想通貨による決済の仕組み、メリット、利用上の注意点について説明してください。
A 仮想通貨は、特定の管理者を置かず、システム利用者自身によってシステムを監視するという特徴があります。決済についても送金が真に送金者の意思に基づいて行われたかということを、他のシステム利用者が確認することで行います。このため、送金について手数料が(ほとんど)かからないといったメリットがある半面、ハッキングのおそれや、通貨としての信用性(相手方が、仮想通貨による決済を受け入れてくれない可能性)などの面で注意が必要です。また、投機目的で仮想通貨の購入を勧誘され、トラブルになるケースもあります。
仮想通貨による決済の仕組み
前提として、仮想通貨の基本的な仕組みを、代表的なビットコインを念頭に置いて説明します。
①物理的に実在しない
仮想「通貨」、ビット「コイン」という名称から誤解されますが、実物の紙幣やコインは無く、データ上で誰が誰に送金したのかなどの記録がされているに過ぎません。
②特定の管理機関がない
システム自体や取引の全履歴について個人情報が明らかにならない形で一般公開され、不正や誤りがないか、各人の残高や誰が誰に送金したかなどについて各利用者自身によって管理がされるため、銀行などのシステム管理機関がありません。透明性を高めて不特定多数の利用者間で相互に確認を行い、権利移転の信頼性、正確性を担保しようとする仕組みを採用したところが大きな特徴です。
これを踏まえて決済の仕組みを説明すると、仮想通貨で送金を行いたい場合、特定の管理者が存在しないため利用者が「秘密鍵」「公開鍵」を用いて確認を行います。
例えば、Aさんに対していくら送金したい、という送金リクエストをあなたが秘密鍵を用いて作成し、ネットワークに流します。ネットワークに流すと、利用者は公開鍵を用いて送金リクエストが実際にあなたの発したものかを確認します。これが完了すると、送金の記録が作成されて決済が完了します。
なお、「秘密鍵」「公開鍵」の技術は、仮想通貨に限らず、インターネット上の書面の自署性を証明する際にも用いられています。
仮想通貨による決済のメリットと利用上の注意点
メリットとしては、手数料がほとんどかからないことが挙げられます。銀行などが管理していないので、手数料も発生しません。ただし、決済(他の利用者による確認作業)を早く行うため、手数料を上乗せして送金リクエストを行うことも可能です。
また、インターネットを介してのやり取りのため、仮想通貨による決済を受け入れてくれる相手との間であれば直接送金が可能であるということも挙げられます。
利用するにあたっては、暗号鍵を盗まれないようにすることが必要です。なりすまされても、仮想通貨は管理する機関が存在しないので損失は誰も補償してくれません。
もちろん、相手が仮想通貨による決済を受け入れない可能性があることにも注意が必要です。
さらに、投機目的で仮想通貨を購入する場合、当然のことですが、支払ったお金さえ戻ってこないリスクにも注意が必要です。
平成29年4月1日に「資金決済に関する法律」の改正法が施行されて以降、国内での仮想通貨の売買や交換などには、仮想通貨交換業者の登録が必要になりました。以前は規制が存在しませんでしたので、「値上がりする」「高配当が付く」と根拠のない勧誘を受け、仮想通貨を購入させられたものの、勧誘の通りにはならず、法定通貨への換金方法もわからない、といったトラブルが多発していました。
今後は、仮想通貨の購入などの勧誘を受けた際は、仮に興味があったとしても、まずは勧誘を行った者が仮想通貨交換業者としての登録がなされているか、確認を行うようにしましょう。 (弁護士・植村 周平)
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