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真壁昭夫の経済底流を読み解く 懸念される経常収支の黒字激減 企業の競争力を回復させる環境づくりが必要

2月10日に、財務省が昨年12月の国際収支(速報)を発表した。このうち、経常収支は過去最大の6386億円の赤字となり、単月ベースの赤字は3カ月連続となった。また、2013年暦年で見ると、経常収支の黒字はわずか3兆3000億円。前年比マイナス31・5%と、大幅に減少した。

従来、わが国は海外からの受け取りが圧倒的に多く、経常収支は大幅な黒字が続いていた。ところが最近、大量のエネルギー資源の輸入などによって貿易収支が赤字に転換したことに加え、海外投資家の株式保有に伴う配当金の支払いが増え、経常収支の黒字幅が急激に縮小している。

こうした状況が続くと、海外からモノやサービスの代金として受け取る金額よりも払う金額の方が多くなり、経常収支の赤字化が懸念される。これは、わが国が蓄積してきた経済的な富が海外に流れ出ることを意味している。

経常収支の黒字幅が縮小している最大の要因は、11年から3年連続で赤字に落ち込んでいる貿易収支の赤字幅の拡大にある。赤字基調になっている主な理由は3つある。1つは、原子力発電所の休止に伴って、海外から大量の液化天然ガスを買っていることだ。わが国の電力事情を考えると、単価が高くても輸入量の確保が欠かせない。これが、エネルギー輸入額の急増につながった。天然ガスの輸入増だけで貿易収支を4兆円余り悪化させている。

2つ目は、企業が生産拠点を海外に移転したことだ。最近まで円高が続いたこともあり、わが国の企業は海外での生産を余儀なくされた。その結果、多くの企業がコストの安い海外生産を選択することになった。自動車メーカーをはじめ、海外で生産した製品を日本に輸出するケースが増えており、それがわが国の輸入金額を押し上げている。

そして、最も懸念される3つ目の理由は、製品の競争力が低下していることだ。最近、スマートフォンなどのIT関連機器に関しては、消費者は海外メーカーの製品を選ぶケースが目立つ。高級衣料品や宝飾品、掃除機などの電気製品に至るまで、輸入の増加が顕著だ。それが消費税率引き上げ前の駆け込み需要とつながって、輸入を拡大することになった。

今後、財政赤字と経常赤字が重なる〝双子の赤字〟が現実味を帯びてくる。消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の高まりが、海外製品の輸入増加を加速させている面はあるものの、そうした傾向が続くようだと貿易収支の赤字幅は一段と拡大すると考えられる。また、海外投資家の国内株式保有の増加は、海外向けの配当金の支払いとなって経常収支を圧迫することになる。

最終的には、わが国の経済が不安定になることが懸念される。そうした事態を防ぐためには、しっかりとしたエネルギー政策を策定しなければいけない。それ以上に、大胆な規制緩和策などによって、企業の競争力を回復させる環境づくりが必要だ。安倍政権が本気で成長戦略に取り組み、わが国の企業が海外企業との競争に負けない実力をつける施策が検討されることを期待する。

まかべ・あきお 1953年神奈川県生まれ。76年、一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。83年7月ロンドン大学経営学部大学院卒業。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向などの後、市場営業部、資金証券部を経て、第一勧銀総合研究所金融市場調査部長。現在、法政大学大学院教授。日商総合政策委員会委員。『はじめての金融工学』(講談社現代新書)など著書多数。

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