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真壁昭夫の経済底流を読み解く 成長の源泉=先進IT企業の光と影

現在の世界経済を考える上で、米国のIT先端企業の代表格である“GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)”の存在は大きい。GAFAは成長企業の代表格であり、これまで多くの株式投資家がGAFAを“成長をけん引するスター”として扱ってきた。グーグルは、検索機能に加えクラウド・コンピューティングやスマートフォンのOS事業を中心に成長を遂げた。アップルはiPhoneのヒットを通して、世界にスマートフォンを普及させた。フェイスブックはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のヒットで莫大な広告収入を得てきた。また、アマゾンはEC(電子商取引)などのプラットフォーム(経済活動の基盤)を提供し、世界の物流に変革をもたらしている。この四つのIT先端企業に共通するのは、従来にはないビジネスや商品を創造することによって需要を生み出し、それを取り込んで成長してきたことだ。

ただ、GAFA4社を一括りに扱うことは必ずしも適切ではない。経済成長のエンジン役の先進IT企業にも、光と影の部分があることを忘れてはならない。例えば、すでにフェイスブックは、情報セキュリティーなどの大きな課題に直面している。GAFA各社を中心に、世界全体でIT企業にはプライバシー保護やデータの厳正な管理と保護が求められていくだろう。現状、多くのIT企業が人海戦術によってデータの不正利用や偽アカウントの摘発などを行っているが、それはいつまでも続けられるものではない。GAFAの中からITセキュリティー管理のための先進的なテクノロジーを実用化できる企業が現れるか否かは、今後の成長性を考える上で重要だ。

一方、アマゾンのビジネスモデルは、IT空間と実社会をシームレスにつなぐことを目指すもの。IT関連の技術だけでは同社の事業は成り立たず、私たちが日常的に使うネットショッピングを考えると、オンラインで売買契約を締結し、決済を行った上で購入した商品を実際に手にするためには、物流が欠かせない。運送にかかる時間とコストを最小限に抑えつつ最終目的地に商品を届けることは、IT企業がEC事業での競争力を高めるために必要な要素だ。突き詰めていえば、IoT(モノのインターネット)などを通して社会にネットワークテクノロジーが浸透していくためには物流機能が不可欠ということである。その意味で、“物流を制する者は世界を制す”と言っても過言ではない。ただ、アマゾンといえど永久に成長を続けることはできず、どこかで成長ペースは鈍化するだろう。その要因となりえるのがITセキュリティー問題だ。

先進IT企業がビジネスを拡大するに伴い、より多くの個人や企業などのデータ、情報が同社に吸い上げられていく。そうなると、世界全体で「アマゾンが個人や企業のデータを独占している」との懸念が従来以上に高まることは避けられないだろう。その状況にどう対応するかが、IT企業にとってチャンスにもなれば落とし穴にもなる。多くのIT企業に対して情報セキュリティーの強化への取り組みが求められるはずだ。その対象は、ユーザーのデータを保護することにとどまらない。ネット上で消費者が購入した商品の品質が期待通りであったか、偽物の取り扱いがないか、契約に違法性はないかなど、社会的な公平・公正さを守ることが求められる。

注目すべきポイントは、どの企業が他社に先駆けて不正検知、ハッカー撃退などのネットワークテクノロジーを開発し実用化できるかだ。現在のGAFA以外の企業が新しいテクノロジーを開発し、大きな注目を集めることも考えられる。例えば、ITスタートアップ企業が従来にはない発想や理論を用いて、高度な情報管理のためのセキュリティー・テクノロジーを開発し実用化できれば、世界のIT業界には無視できない影響があるはずだ。ITセキュリティーに関するテクノロジー開発競争は、GAFAの将来、それに続く成長企業の登場を考える上で注目したい分野だ。

まかべ・あきお 1953年神奈川県生まれ。76年、一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。83年7月ロンドン大学経営学部大学院卒業。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向などの後、市場営業部、資金証券部を経て、第一勧銀総合研究所金融市場調査部長。現在、法政大学大学院教授。日商総合政策委員会委員。『はじめての金融工学』(講談社現代新書)など著書多数。

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