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テーマ別企業事例 今が始め時「社内改革」大作戦

事例4 ボンボンの意識改革で社員も動く甘酒増産に向け社内一丸で取り組む

橋本醤油(熊本県熊本市)

製麹(せいぎく)機を新たに1台導入するにあたり、工場内の動線も変えて、新たなスペースをつくった

大正8(1919)年に熊本城のもとで創業した橋本醤油は、しょうゆ、みそ、甘酒の製造販売を行っている。近年の甘酒ブームで需要が伸び、甘酒事業を強化していくために、社長の後継者が中心となって増産に向けた改革に乗り出した。設備投資や製造方法の効率化、コスト削減に取り組んだ結果、少ない投資で製造コスト25%カット、生産量1・5倍アップに成功している。

需要が生産量を追い越し増産の検討を始めたが……

今年で創業100年を迎える橋本醤油が甘酒の製造を始めたのは、1955年に熊本城の祭りのために熊本市から製造を依頼されたのがきっかけだった。その後、現社長の橋本和彦さんが研究を重ね、今の味をつくり上げた。自社の甘酒について、橋本さんの息子で、同社の部長を務める泰高さんはこう説明する。

「甘酒は原料が米と米こうじだけで、味にクセが出やすい。うちの甘酒は、クセがなく飲みやすくて、独特の臭みがありません。この味と香りを出すために、父は試行錯誤を繰り返しました」

製品は熊本県内の小売店で販売しているが、もともとは秋から冬の季節商品で、その期間しか製造していなかった。その状況が大きく変わったのは、2011年ごろに始まった塩こうじブームの影響で、米こうじでつくった甘酒が健康や美容に良いと注目を集めるようになってからだった。

「夏バテ対策にも良いということで14年ごろから夏にも甘酒が売れるようになり、甘酒ブームの到来を実感しました。そのうち需要に製造が追いつかなくなり、既存のお客さまに迷惑をかけるような状況になってしまったので、増産を考えるようになりました」

増産には設備投資が必要で、一回の生産量を増やすか、生産回数を増やすかで、導入する設備が異なってくる。業務の負担が増すので人を増やす必要もある。そして、投資しただけの利益が上げられるかどうかも問題になってくる。「そう考えていくうちに本当に大丈夫かと心配になり、自信が持てずに保守的な考え方に走り、やっぱりやめようか、となって」と泰高さんは当時を振り返って笑う。

投資額と生産量のバランスで設備投資を決めていく

その増産計画が前進した背景には、泰高さんの意識改革もあった。

「以前の僕は俗にいうボンボンのダメな後継ぎで、営業でろくに数字も取れないのに、社員に対して言うことだけは偉そうでした。これではいけないと思ったのが29歳のころで、そこで、商工会議所のセミナーで出られるものは全部出て勉強しようと決意したんです」

そのセミナーがきっかけで経済産業省の地域資源活用事業に向けて計画をつくり始め、地域の大麦を使った甘酒の事業で経済産業省から認定を受けた。そして16年10月からは中小企業基盤整備機構の支援を受け、製造面と経理面で専門家のアドバイスを受けながら、甘酒の増産計画に取り組んでいった。

「社員たちには最初のミーティングでこのプロジェクトに全員で取り組んでいくことを伝えました。甘酒増産の設備については、投資額と生産量のバランスから、今より10倍つくれる設備ではなく、生産回数を増やして1・5倍つくれる設備を導入したほうがリスクが少ない。そういったことを計画書に落とし込んでいきました」

その計画により、さまざまな作業工程を改善していった。それまで製麹機(せいぎくき)1台を使って1週間に2回しかできなかったこうじづくりを、機械を1台増やして3回できるようにし、製造量が1・5倍になった。それ以外にも、米を炊く作業は外注化し、炊いた米にこうじ菌を付ける設備を導入。手貼りしていたラベル貼りも、容器の形状を変更して機械貼りを可能にした。これら製造工程の改善により、生産量は1・5倍、製造時間の短縮により製造コストは25%カットすることができた。

需要増に増産で対応新商品の開発も手掛ける

「工程に関しては工場の担当者が生産計画を立て、僕は販売計画書をつくりました。計画の進行状況を書き込む表を休憩室に貼り、それぞれの担当者が書き込んでいくようにして、状況がひと目で分かるようにしました。ところが、始めて3週間もたつとみんなだんだん書かなくなってくる。社員たちに新しい取り組みを習慣化させることがちょっと難しかったですね」

書かない社員が悪いのではなく、その原因がやり方にあると考えた泰高さんは、業務に忙しい社員たちに書かせるのではなく、自分から定期的に彼らに状況を聞いて回って表に書き込んでいった。その姿を見た社員たちはそのうちに、聞かれなくても自分から表に書き込むようになっていった。

「一つの舟をこいで進んでいく上で、みんながバラバラに動いてもスピードが出ない。今回のプロジェクトで、社員たちが同じ方向を目指して協力し合い、会社の発展をチームで支える力がついたことが一番大きかったと思います」と泰高さんは力を込めて言う。

半年かけて進めたプロジェクトは、17年4月に本格的に稼働を始めた。ふたを開けてみると、需要の増加に対して増産体制が整っていたため、売り上げが大幅に上昇した。翌18年は前年ほどではなかったものの、常温保存できる甘酒の新商品開発に力を入れた。

「これからも新商品の開発に取り組んでいきます。また、他社と協力して、食品を中心に小ロットでもOEMを受託するOEMラボという事業も始めました。新たに何かをしたいという人や企業がトライアル的に形にできる受け皿にしていこうと考えています」

甘酒の増産計画から始まった同社の社内改革の取り組みは、すでに新たな展開に進んでいる。

会社データ

社名:橋本醤油株式会社

所在地:熊本県熊本市北区貢町780-7

電話:096-288-0811

HP:http://www.hashimoto-shoyu.com/

代表者:橋本和彦 代表取締役社長

従業員:16人

※月刊石垣2019年1月号に掲載された記事です。

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