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テーマ別企業事例 今が始め時「社内改革」大作戦

事例3 離職率50%以上が3%に幸せな会社、社会を創り広げる

山崎文栄堂(東京都目黒区)

オフィスを印象づける大きなテントは、ミーティングにランチにと大活躍。社内には高音質の鳥のさえずりが響く。働きやすい社内環境の見学会も随時行っている(予約制)

山崎文栄堂は、オフィス用品の通信販売会社アスクルのサービス事業を主軸に、オフィスの生産性向上の提案、推進をしている。一時は倒産の危機に瀕(ひん)したが、20年間で売り上げは1億円から約61億円、顧客数は50社から3万8000社へと拡大した。だが離職率は50%以上という社内環境の悪さ。状況改善に、まず経営者自らが変わった。

人とモノの関係を整理し、「ことの仕組み」を変える

1995年、代表取締役社長の山崎登さんが入社した当初、会社はまさに倒産の危機に直面していた。

「当時、会社は渋谷にあって、渋谷の全ての銀行に頭を下げて回りましたが、全行に融資を断られました」と山崎さんは振り返る。

会社をつぶしたくない。その一心で山崎さんは思い切った戦略を立てた。25年、祖父の山崎健三さんが創業した文房具店、山崎文栄堂の店舗を閉じ、94年に代理店契約していたアスクルとの事業に舵(かじ)を切ったのだ。最新のマーケティング戦略を次々と打ち出し、「倒産」の二文字がちらつく中、必死に働いて、売り上げ1億円を2001年には20億円超に、07年には30億円に引き上げた。倒産の危機を救うどころか成功企業の仲間入りの業績である。売り上げは前年高を落とすことなく伸び続け、顧客も増加の一途をたどる。

「数字だけ見れば、素晴らしい会社に見えますね。でも、これを見てください」

そう言って、山崎さんがパソコンのモニターに映し出したのは01年当初のオフィス写真だった。ブラウン管のデスクトップパソコンの周りには書類が山積みで、さらにデスクの下にも書類がひしめく。そんな机がいくつも並び、壁面の本棚も雑然としている。

「探し物をする時間も多くて、長い。常に空気がピリピリしていて、荒(すさ)んだ環境でした」

そこで山崎さんは一つ目の社内改革を起こした。環境整備と経営計画書作成の二つの柱を立て、業務上行っている〝こと〟の仕組みを整えていったのだ。使った道具の返却・補充を徹底し、朝礼後の掃除をルーティンワークにするなど身の回りをスッキリさせ、マナーも見直した。事業計画書も手帳サイズにして全社員に毎年配布し、年間の行事や定例会議から社員の誕生日まで明記した。会社の方針を明文化し、朝礼時に暗唱することでビジョンの共有化も図った。生産性、社員のやる気も上がり、売り上げ増という結果もついてきた。社内改革は大成功だった。

お互いを理解し合う「心の仕組み」をつくる

「そのころから、上場企業と同じように3カ月に一度は売り上げを銀行の支店長に報告しています。今では7行から無担保無保証で10億円を調達できるまでの信頼関係を築いています」と山崎さんはほほえむ。

だが、〝ことの仕組み〟だけでは改善し切れなかったことがある。離職率の高さだ。14年には残業時間は1カ月で80時間に達し、離職率は50%の高止まりのまま。社員の在籍期間も平均3年と短く、続かない。

「業績も好調で、社員の給与も毎年上がっていました。しかし、一人、また一人と、心か体か、または両方が疲れ切って辞めていきました。そして社長である私自身も、次第にそうなっていったのです」 そんな山崎さんを心配して、知人が勧めたのがコンサルティング会社、ワールドユーアカデミーの研修だった。幸せな会社経営の仕組みや、人が成長する心の仕組みに重点を置いたプログラムで、最初は山崎さんも半信半疑だったという。だが、半年、1年と通ううちに体も心も軽くなっていく実感があった。

「自分自身を内省内観する重要性も学びました。そこで分かったのが、経営者は孤独なもの、売り上げを上げ続けなきゃならないというプレッシャーと不安が自分の中に渦巻いていたことでした。経営者である僕の不安が、そのまま社内に広がっていたのです」

その根底にあったのが「会社をつぶしたくない」という熱い思いだった。原動力だったはずの思いが、いつしか山崎さんの重荷になっていたのだ。幹部も研修に参加するようになり、研修の一環で屋久島へ山登りに行った時に、常務から「数字を上げなきゃ、社長の方針をすぐに実行に移さなきゃという思い込みがあった」と打ち明けられる。

「初めて本音で話し合えたという充実感がありました。ことの仕組みのほかに〝心の仕組み〟が必要だったのです」

「仕事に飽きた」と社長に言える社風にする

ことの仕組み改革は1年ほどで成果が見えたが、心の仕組みは3年かけて変わり始めたという。

「精神論ではなく方法が必要です。例えば朝礼は声を張り上げるのではなく瞑想をして心を落ち着かせる。一人一人に合った話の聞き方、褒め方を見つけ、理解する。コミュニケーションに重点を置いて社員教育をしていきました」と山崎さん。社内環境も社員と話し合って、大きなテントを置き、生産性が上がる機能性と遊び心あるデザイン性が融合した個性的な空間が生まれていった。

「国民の幸せランキング1位のデンマークに行って、企業の視察をした時のことですが、『社長、この仕事もう飽きました』と社員が平然と言う場に出くわしました。幸せランキング下位の日本では考えられないことです。社長は怒るでもなく、どんな仕事をどこでどんなふうにやりたいか一緒に考えていくんです。自社もそういう会社にようやくなってきました」

離職率は今や3%。クリエーティブとイノベーションを軸に、会社の枠を超えて喜ばれる仕事にしていきたいと満面の笑顔で語った。

会社データ

社名:株式会社山崎文栄堂

所在地:東京都目黒区青葉台3-17-13 鉄信ビル

電話:03-5464-7110

HP:http://bun-eidou.co.jp/

代表者:山崎 登 代表取締役社長

従業員:45人

※月刊石垣2019年1月号に掲載された記事です。

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