日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会の中小企業関係4団体は5月28日、「中小企業の成長と地域の再生に向けた政策の断行を」と題した共同要望書を取りまとめた。
要望書では、「中小企業の成長を後押しする法人税制改革」「電気料金引き下げの早期実現」「中小企業・小規模事業者の活力強化および地域活性化に資する支援策の拡充」の3点を強調。政府が今月中に取りまとめる「成長戦略の改訂版」や「骨太の方針」に、4団体の主張が盛り込まれるよう、要望書を政府・政党など関係各方面に提出し、その実現を働きかけている。
日商の田中常雅特別顧問・税制委員長は3日、自民党・経済産業部会に出席し、法人課税について4団体の共同要望に沿って意見陳述。「中小企業の軽減税率を含む法人実効税率の引き下げ」、「外形標準課税の中小企業への適用拡大には断固反対」、「欠損金繰越控除をはじめ中小企業税制の縮減反対」などを訴えている。
以下は、要望書の全文。
4団体共同要望(全文)
平成26年5月28日
日本商工会議所
全国商工会連合会
全国中小企業団体中央会
全国商店街振興組合連合会
中小企業の成長を後押しする法人税制改革を
1.中小企業の軽減税率、小規模法人特例の創設を含む法人実効税率の引き下げを
◆経済の好循環実現に向け、地域経済を牽引する中小企業の成長に大きく寄与する法人実効税率の海外主要国並み20%台への引き下げが必要である。
◆同時に、中小企業ならびに中小企業組合の軽減税率についても、アジア諸国をはじめとする海外との競争に打ち勝てる水準へ拡充(税率10%、適用所得金額の拡大)すべきである。
◆また、小規模企業振興基本法に基づく施策の一つとして、資本金3千万円以下の小規模法人に対する軽減措置を導入すべきである。
2.外形標準課税の中小企業への適用拡大には断固反対
◆代替財源の議論にあがっている法人事業税の外形標準課税は、従業員給与に課税するためアベノミクスの賃上げ政策に逆行する。
◆地域の雇用を支え、労働分配率が8割にも達する中小企業への適用拡大は、赤字法人175万社が増税とその影響が甚大であり断固反対する。
3.欠損金繰越控除をはじめ中小企業税制の縮減反対
◆欠損金繰越控除の利用制限(92万社の利用企業が増税)や、中小法人向け租税特別措置の利用制限、留保金課税の中小企業への拡大など、中小企業にこれ以上の負担を課すことは反対である。
電気料金引き下げの早期実現を
1.電気料金の引き下げのため、原子力発電の安全確認・再稼働が最重要・最優先課題
◆原子力を火力で代替するための燃料費負担により、電気料金は震災前比、産業部門で約3割上昇。我が国全体でも昨年度は3・6兆円、平成23年度以降累計で9兆円の国富が流出。
◆大企業に比べて製造コストに占める電気料金の比率が高く、代替手段に乏しい中小企業・小規模事業者は高騰する電気料金をそのまま受け入れるしかなく、雇用や投資の抑制で対応せざるを得ない。
◆電気料金引き下げのため、原子力発電の安全確認・再稼働が最重要・最優先課題。原子力規制委員会は審査プロセスを明確化し、効率的な審査を行うべき。政府は立地地域が求める防災対策等に万全を期すとともに、再稼働の必要性を明確に説明するべきである。
2.再生可能エネルギー固定価格買取制度の早急な抜本的見直し・地球温暖化対策税の税率引き下げ
◆固定価格買取制度賦課金は既に0・75円/kWhに達している。国民負担総額は6520億円/年、今後20年間で10兆円を超える。現状の制度のままでは、今後も急速な国民負担増大が続く。
◆そのため、買取価格の引き下げはもとより、導入量や国民負担への上限設定など早急な抜本的見直しが必要である。
◆地球温暖化対策税についても、現下のエネルギーコストを取り巻く現状に鑑み、森林吸収源対策への税収の使途拡大がありえないことはもとより、税率の引き下げを検討すべきである。
中小企業・小規模事業者の活力強化および地域活性化に資する支援策の拡充
1.中小企業・小規模事業者の活力強化
◆創業支援策の着実かつ安定的な実施(5年程度の継続)、マーケット重視の新製品・サービス開発や販路開拓への支援、ITと融合したものづくり(3Dプリンターの活用等)の支援、海外展開支援策の拡充、地域経済を牽引する中核企業への支援、事業承継の円滑化等について、関係府省庁や地方自治体等の連携により、強力に展開されたい。
◆今後の小規模企業振興基本法の制定を見据え、わが国企業の87%を占める小規模事業者の持続的経営、さらには活力向上に資するあらゆる振興策を講じられたい。
2.地域活性化に向けた取り組みの促進
◆人口減少が深刻化する中で、地域の活性化を図るためには、交流人口の拡大、商店街をはじめとする地域商業の再生とコンパクトで賑わいあるまちづくりの推進、地域資源を活用した農商工連携や産学官金連携に基づく新事業の促進、コミュニティビジネスの推進などと、それによる地域内外の経済循環の活性化が重要であり、これら取り組みへの支援の拡充を図られたい。
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