Q 当社では、出退社管理にタイムカードを使用していますが、昨今の感染症による影響などで、タイムカードを打刻できない場面が増えてきています。「労働時間の客観的な方法による管理義務」を果たすには、どのような運用を行えばよいでしょうか。また、今後対応すべきことを教えてください。
A タイムカードの打刻ができない場合は、自己申告による方法に拠らざるを得ませんが、適正に労働時間が申告されているか確認をとるなどの必要があります。時間外労働の時間管理は特に留意してください。自己申告は例外的な対応になりますので、今後は、タイムカードに代わる勤怠管理ツールなどの導入も検討が必要でしょう。助成金などを活用して、この時期に取り組んでみてはいかがでしょうか。
自己申告制の運用上の留意点
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には、自己申告による時間管理の運用における留意点が示されています。
①自己申告制の運用について従業員本人と労働時間を管理する者に十分な説明を行うこと。
②自己申告の労働時間が実際の時間と合致しているか、適正に申告できているかの実態を確認すること。相違があれば是正する。
③自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な申告を阻害する定めや慣習等は認められない。
テレワーク(在宅勤務など)でタイムカードを打刻できない場合もこうしたガイドラインを踏まえて、あいまいになりがちな時間管理を適正に行うことが重要です。
労働時間管理対策の実行
①規程等の確認・徹底
時差通勤や在宅勤務などにより始業・就業時刻や就業の場所が変更となる場合は就業規則や勤務規程などを状況に即して見直します。
2020年4月からは中小企業にも、時間外労働の上限規制が適用されました。時間外労働の上限を超える状況や恒常的な長時間残業を生じていないか注意しなければなりません。また、労働時間の記録と実態が乖離(かいり)しやすいのが、残業時間や時間外労働時間です。残業、休日出勤、深夜労働の際は、上司の事前承認を徹底させましょう。
②申告内容の確認・調査
自己申告の労働時間の正確性を確認するために、パソコンのログイン、ログオフの記録、社内システムの利用履歴など打刻に代わる客観的な方法による情報をもとに実態調査を行います。残業命令書や報告書などの記録とも突き合わせ、乖離がないかを確認します。月末にまとめて申告するような運用は是正し、日々の状況を把握し、時間外労働なども適宜確認できる運用を努めて行いましょう。
③勤怠管理ツールなどの導入
自己申告制はあくまでやむを得ない措置ですので、タイムカードに代わる手段として労務管理や勤怠管理のためツールの導入を今後は検討すべきです。パソコンなどの使用時間の記録から始業・終業時刻を正確に管理できるほか、オンラインで離席中や中抜けの時間を把握できるものもあり、これらを活用すれば、業務量の平準化、時間外労働の縮減も期待できます。
助成金等の活用
労働時間管理の対策に当たっては次の助成や支援が利用できますので参考にしてください。
①厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
成果目標を選択して取り組み、その達成状況に応じて要した経費の一部が助成されます。就業規則や労使協定等の作成・変更、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用ソフトウェアなどの導入といった取り組みも認められます。複数の成果目標を達成すれば、最大250万円の受給が得られます。
②経済産業省「IT導入補助金」
IT導入支援事業者が登録認定を受けた製品に限定されますが、事業者の支援を得ながら導入できるメリットがあります。こちらは導入費用の1/2、特別枠のテレワーク環境の整備では3/4まで、最大450万円の補助を受けられます。 (中小企業診断士・竹内 敏則)
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