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まちの視点 商店街から変わる女川

シーパルピア女川の中央を貫く幅10メートルのレンガ敷きの歩道

変化に対応できる先進のテナント型

東日本震災で甚大な被害を受けた宮城県女川町。およそ4年後の2015年3月、かさ上げされた土地の上に新しいJR女川駅の駅舎が完成し、被災地の中でもっとも早く「まちびらき宣言」を行っている。

さらにそれから9カ月後の15年12月には、駅の東に商店街「シーパルピア女川」がオープンした。町の所有する土地に施設を建て、そこに各店がテナントとして入る全国的にも先進的なテナント型商店街だ。

ウミネコをイメージしたという温泉施設と駅舎を兼ねたJR女川駅から女川港へまっすぐ延びるレンガ通りの両側に、計6棟の平屋の建物で構成されるシーパルピア女川。舗道の幅は10メートルあり、広い空の下開放感であふれる空間に並ぶ漆黒の屋根の施設は、どこかのテーマパークのようにも見える。

「まちの機能を考えてゾーニングしました。駅に近い場所には普段の買い物に便利な店を、奥に行くにつれて時間を使える店や製造機能を併せ持った工房的な店をそろえたところが特徴になっています」と語るのは、シーパルピア女川を管理する女川みらい創造の代表取締役専務、近江弘一さんだ。

そろった店は全部で27店。うち14店が被災によって店を失った商業者によるものだ。各テナントは5年契約で、3年目まで家賃は半額に減免され、その後段階的に増えていく仕組みだ。所有と利用が分かれているので、これからも大きく変わっていく女川のまちに常にふさわしい業種をそろえることができる。

16年12月には「地元市場ハマテラス」がオープン。鮮魚中心の物販を想定したが、入居する8店は得意分野で飲食を提供し始め、通り沿いのテラスのテーブルはこれらを味わう人でにぎわう。

産業をつくり人口を増やす

「シーパルピア女川ばかりでなく、まちとしてのいろいろなメニューを考えなければなりません。この会社は、女川町というまちの営業企画をする会社でもありますから」 近江さんは同社の役割を「女川の営業企画」と表現する。

まちはこれからも大きく変わり続ける。秋までには周辺に郵便局や銀行などの金融機関がそろう予定だ。

女川港沿いには公園などの緑地の工事も進む。駅の南側には町役場の庁舎の一部ができ、そのさらに南側には小中一貫校が建設される予定だ。かつて女川には小学校が3校、中学校が2校あったが、それが一つにまとまる。その周りの高台では災害公営住宅をはじめ住宅建設が進められている。歩ける範囲に限ってもざっと1000人規模の人口増が見込まれている。

シーパルピア女川の存在は、単に買い物や飲食の拠点という意味にとどまらない。震災によりまちのあちらこちらに、あるいは他のまちに分かれて暮らさざるを得なかった人たちがここに再び集まってくる。新しくコミュニティーをつくっていくための象徴だ。

もう一つ、ここから産業を生み出すための大きな土台にもなるという。シーパルピア女川に工房のエリアを設けた意図を近江さんはこう語っている。

「ものづくりには切ったり、塗ったり、乾かしたりといった工程がありますので、周辺でその工程に関連した事業が立ち上がってきます。また、ここでつくって仙台で売ったり、インターネットで販売したりすることもできます。それが地場産業になっていくことも考えられるでしょう。そうしなければなりません」

女川では、養殖でホヤやホタテを育てたり、それを半加工したりする1・5次的な産業に携わる人が多いという。そこにとどまらず、製品化、流通、販売、そして消費者まで意識が届けば、豊富な海の資源を生かし、一気に6次産業まで発展させられる可能性がある。地元市場ハマテラスで飲食店に乗り出した店にその片鱗(へんりん)を見ることができる。

人々が集まる商業エリアだからこそ、新しい産業を生み、育てる場にしたい、と関係者は先を見据えている。

(笹井清範・『商業界』編集長)

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