見えない障がい「失語症」のある人々の社会参加の一助となれる企業へ
株式会社言語生活サポートセンター 代表 園田 尚美(そのだ・なおみ)
失語症について
失語症は「話す、聞いて理解する、読んで理解する、文字を書く、計算する」など、人間のコミュニケーション能力全般の障がい要因となる脳卒中や脳外傷などの後遺症で、脳の中枢神経、言語野の損傷によって生じる障がいです。その障がい特性から、医療、福祉、保健、社会的認知などのあらゆる分野で対策が遅れてきた疾患です。発症は40代から50代に多く、全国に推定50万人の患者さんがいます。
失語症のある人の切実な願い「当たり前の生活の確保」
起業のきっかけは、2003年2月、夫が脳卒中から重度の失語症者になったことでした。病院を退院した後、地域で言葉のリハビリをする環境が全くなく、引きこもりの生活を余儀なくされ、失意の下に長い年月を過ごしていました。失語症は、2年から3年、あるいは疾患状態により長期の機能訓練により改善が見込めることを多くの専門家が報告していますが、回復期病院でのリハビリは180日と定められています。また、失語症の回復は退院後、地域で生活しながらの機能訓練の方がより効果的であると指摘されているにもかかわらず、そのリハビリ環境は、障がい福祉サービス、介護保険サービスともにゼロに等しい状態です。
そのため、多くの失語症者が他の福祉サービスの前提というべき機能訓練ができないままに、家庭復帰、職場・社会復帰が大きく阻まれ、孤独・孤立生活などを強いられ、人間としての尊厳が確保され得ない状況に置かれています。
こうした現状を少しでも改善し、失語症のある人たちが社会で当たり前に過ごせるよう支援すべく14年に開業したのが言語訓練に特化したデイサービス「言語生活サポートセンター」です。弊社では、人間社会に必要な言葉を失った失語症のある人の自立支援(機能訓練)により、個々人に適したコミュニケーション方法の獲得、仲間づくりを応援し、言語の回復をともに喜び、社会への参画を目標としています。
介護保険事業から、障がい者総合支援法自立訓練事業へ移行
19年に施行された、循環器病対策推進基本法の第14条および第16条などにおいては、機能訓練を含めた福祉サービスを、居住する地域にかかわらず、等しく、継続的かつ総合的に提供するための施策などを講ずることが明記されました。特に、附則第3条では「失語症」の文言を明記した上でリハビリ提供機関の整備などが定められています。
現在、弊社は介護保険事業の失語症に特化したデイサービスから、障がい者総合支援法の下の障がい者機能訓練事業に移行する準備のために休業中です。今春再開業の予定でしたが、コロナ禍の影響で東京都の認可取得などの事務手続きが大幅に遅れており、10月以降に新規事業所を開所する予定で準備を進めています。
会社データ
社名:株式会社言語生活サポートセンター
所在地:東京都杉並区
メールアドレス:naomisonoda@gengoseikatsu.com
電話:080-5515-5452
創業:2014年
事業概要:障がい者機能訓練事業
※月刊石垣2020年9月号に掲載された記事です。
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