経済産業省はこのほど、平成28年度予算の概算要求を取りまとめ、公表した。概算要求額は、27年度当初予算比20・8%増の1兆3710億円となり、このうち中小企業対策費は1370億円で27年度当初予算比23・3%増。小規模事業者への販路開拓支援が110億円とほぼ倍増したほか、ふるさと名物の販路開拓、創業、事業承継、人材確保支援策などが拡充されている。平成28年度の中小企業関係の概算要求の概要は次のとおり。
1 被災地の中小企業・小規模事業者へのきめ細かな対応
○中小企業組合等共同施設等災害復旧事業(グループ補助金)【事項要求】
・被災3県の津波浸水地域や福島県の避難指示区域などを対象に、中小企業などのグループが作成した復興事業計画に基づく、施設の復旧・整備を支援する。
○中小機構運営費交付金【14・2億円(継続)】
・被災中小企業・小規模事業者への相談や助言、仮設施設の整備やその活用に関する支援を実施する。
○被災中小企業・小規模事業者への資金繰り支援【107・0億円(継続)】
・被災中小企業・小規模事業者に対する「東日本大震災復興特別貸付」など、低利融資などを実施する。
○被災中小企業・小規模事業者等への事業再生支援【30・6億円(継続)】
・被災県に設置された「産業復興相談センター」において、中小企業・小規模事業者の二重債務問題などの相談受付や再生計画策定支援、「産業復興機構」への債権の買取要請などを実施する
2 経営支援体制の強化
○中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【65・0億円(拡充)】
・各都道府県の「よろず支援拠点」の機能拡充・強化を図る。 ①サブコーディネーターの増員、能力向上によるサービス生産性・知財・ITなどの経営課題への相談機能の充実 ②サテライト拠点の設置などによる利便性の向上 ③地域の支援機関との連携強化 ・「よろず支援拠点」やポータルサイト「ミラサポ」を通じて、マイナンバー導入などの課題の周知や、中小企業・小規模事業者施策の普及を推進する。
○中小企業・小規模事業者への事業再生支援【60・0億円の内数(拡充)】
・財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者への抜本的な再生支援を推進する。 ◆橋渡し機能の強化・知財総合支援窓口の整備 ・産総研における橋渡し機能の強化、知財総合支援窓口の拡充などにより、中小企業の技術的課題の解決を支援する。
3 地域の小規模事業者の活性化
○小規模事業対策推進事業【110・0億円(拡充)】
・経営発達支援計画の認定を受けた商工会議所などが行う、伴走型の小規模事業者支援をより強力に推進する。 ・小規模事業者が商工会議所などと一体となって取り組む販路開拓支援(持続化補助金)などを実施する。
○小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資等)【40・0億円(継続)】
・日本政策金融公庫が商工会議所などの経営指導などを受けた小規模事業者に対して、無担保・無保証人の低利融資を行う。 ◆改正小規模企業共済法 ・親族内での事業承継や役員の退任にかかる共済金の引上げなどの措置を講じる。
4 生産性の向上(イノベーション強化など)
○戦略的基盤技術高度化・連携支援事業【140・0億円(継続)】
・中小企業・小規模事業者が行う産学官金連携による革新的な研究開発や新しいサービスモデルの開発などを支援する。 ・知的財産推進計画を踏まえたセキュリティーが整った開発環境を構築する。
○中小企業・小規模事業者人材対策事業【後掲】
・マイナンバーの導入などの課題に対して、中小企業・小規模事業者の取り組みを支援する。
5 販路開拓・海外展開の推進
○ふるさと名物応援事業【27・0億円(拡充)】
・地域資源を活用したふるさと名物の開発や地域内外への販路開拓に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する。 ◆改正地域資源法(中小企業地域資源活用促進法) ・「ふるさと名物」の販路開拓などを支援する者の認定などの措置を講じる。
○中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業【27・0億円(継続)】
・日本貿易振興機構・中小企業基盤整備機構が連携し、中小企業・小規模事業者の海外展開事業計画の策定や展示会出展などの支援、進出後の課題対応まで、一貫支援を行う。
○地域・まちなか商業活性化支援事業【30・0億円(継続)】
・コンパクトシティ化に取り組む「まち(中心市街地)」、地域コミュニティーや買物機能を維持・強化する「商店街」が、地方自治体と連携して行う、先進性が高く、他のモデル事業となる取り組みを支援する。
6 新陳代謝・事業承継の促進
○地域創業促進支援事業【19・0億円(拡充)】
・産業競争力強化法の認定を受けた市町村で起業する創業者や第二創業者に対する支援を行う。 ・市町村と連携して行う、地域の創業支援事業者の取り組みを支援する。 ◆官公需法の改正 ・創業間もない中小企業の官公需への参入を促進するべく、国などの契約の基本方針の作成などの措置を講じる。
○中小企業・小規模事業者の事業引継ぎの促進【60・0億円の内数(拡充)】
・後継者問題を抱える事業者の事業引継ぎを促進するため、全国展開する事業引継ぎ支援センターの機能を強化する。
○経営者保証ガイドラインの周知・普及【1・0億円(継続)】
・個人保証に依存してきた融資慣行を改善する。 ◆中小企業経営承継円滑化法の改正 ・遺留分特例の対象を親族外承継まで拡充などの措置を講じる。
7 人材確保支援の充実
○中小企業・小規模事業者人材対策事業【25・5億円(拡充)】
・地域の事業者のニーズを把握し、若者、女性、シニアなど多様な人材を都市部や地域内外から発掘し、紹介・定着まで一貫支援を行う。 ◆厚労省施策との連携 ・雇用関係助成金などの周知・利用促進など、厚生労働省の関係施策とも連携して人材不足などに悩む中小企業・小規模事業者を支援する。
8 資金繰り支援など
○きめ細かな資金繰り支援【261・4億円(継続)】
・政策金融・信用保証制度により、中小企業・小規模事業者に対する資金供給の円滑化を図る。
○認定支援機関による経営改善計画策定支援事業【20・0億円(新規)】
・中小企業・小規模事業者が行う経営改善計画の策定に対して、金融機関や税理士などの中小企業経営力強化支援法に基づく認定支援機関の取り組みを支援する。 ◆改正商工中金法、改正信用保険法 ・危機対応時における商工中金の機能強化、NPO法人の資金調達の円滑化に関する措置を講じる。
○消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業【34・1億円(継続)】
・転嫁Gメン(転嫁対策調査官)の474名体制で、消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう、引き続き万全を期していく。
○中小企業取引対策事業【10・0億円(継続)】
・下請事業者の連携促進や、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用、原材料・エネルギーコストの転嫁対策、官公需情報の提供など、取引の適正化を図る。 ◆制度の検討など ・金融機関・認定支援機関の評価の見える化や、信用保証制度の在り方の検討、バーゼル規制への対応などを行う。
最新号を紙面で読める!