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コラム石垣 2020年9月21日号 宇津井輝史

戦争が終わって75年が経つ。コロナ禍の終戦記念日はひっそりと過ぎていった。1世紀の四分の三という遥かな時間はどういう意味を持つか。何よりもまず、この間、この国はいかなる意味でも戦争をしなかったし、巻き込まれることもなかった。長く悲惨な戦争で多くの人が家族を失い、生き延びた人たちの、二度と御免という強い思いが世の底流にあったのは確かだが、不戦を貫き通したことこそ、戦後政治の最大の成果である。

▼平和憲法があったから、米国の核に守られていたから、という意見も間違ってはいない。だが国家の意思として、戦争という手段に訴えるのをやめた。それをきっちり履行してきた戦後の政治家を、そして彼らを選んできた私たち自身を誇ってよい。では、戦争をしない国としての日本がこの先ずっと続くのか。それを考えるといささか心もとない。

▼どの国と戦争をしたのか知らないという若者を生み出したのも75年という時間である。この国は戦争に至った経緯を国民に教えてこなかった。責任を自ら総括する機会がなかったがゆえに、教えられなかったかも知れない。勤勉な国民性もまた誇りではあるが、戦争などなかったことにするかのように戦後復興に邁進した。

▼戦前、戦争を指導した日本の軍部は「大東亜共栄圏」を標榜した。西欧の植民地からアジアを解放し、世界をブロック化する。トーナメントのように戦争を重ね、勝ち残るであろう日米が最終決戦をする。想定した1970年頃よりずっと早く戦端を切ってしまった日本。負けるはずはないとの根拠なき思いが、終わらせ方を誤らせた。社会を運営するこのような根拠なき思考を、戦後もたびたび垣間見ることになる、遥かな75年だった。

(コラムニスト・宇津井輝史)

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