日本商工会議所は9月17日、「令和3年度税制改正に関する意見」を取りまとめ、関係各方面に提出した。同意見書では、コロナ禍によりわが国経済はかつてない危機的状況に直面しているとし、経済の長期停滞が想定される現下の状況では「中小企業の事業継続・雇用維持に資する税制」を措置すべきと主張している。
同意見書は、基本的な考え方のほか、事業継続・雇用維持、コロナ禍を乗り越えて挑戦する中小企業支援、消費税、事業承継などのカテゴリーに整理している。
基本的な考え方には、足元の切実な課題である事業継続・雇用維持のための財務基盤の強化、ポスト・コロナを見据えたビジネスモデルの変革、不確実性に対処できる強靭(きょうじん)な国づくり、地域の活性化についての考え方を盛り込んでいる。
事業継続・雇用維持のためには財務基盤の強化が必要との観点から、中小企業の法人税の軽減税率(15%)の延長・恒久化、欠損金の繰越控除の拡充など財務基盤の強化を促す税制の整備や、土地に係る固定資産税の一定期間の税額(課税標準)の据え置きなどの緊急措置および負担調整措置の延長などを求めている。消費税のインボイス制度については、目下の最優先課題は経済再生であることから、当分の間、制度導入の凍結を要望。電子帳簿保存法の思い切った要件緩和のほか、青色申告特別控除における電子化インセンティブの拡充など小規模事業者の電子帳簿の促進、地域商工業者を応援するクラウドファンディングの活用促進など地域の需要喚起に資する税制の整備も必要としている。
また、近年の後継者難に加えて、コロナでさらなる廃業増加が懸念される中で、M&Aを通じて、価値ある事業を引き継ぎ、経営資源の集約・強化を促進するため、新たな税制措置として、中小企業のM&Aを後押しする税制の創設を働き掛ける。さらに、設備投資減税の延長・拡充、消費税の外税表示の恒久化、事業承継税制の制度改善などを求めている。
意見書の主な内容
Ⅰ.中小企業の事業継続・雇用維持に資する税制措置
○財務基盤の強化を促す税制の整備
○土地に係る固定資産税の一定期間の税額(課税標準)の据え置きなどの緊急措置および負担調整措置の延長
○消費税インボイス制度の導入凍結、小規模事業者の電子帳簿の促進
○地域の需要喚起に資する税制の整備
Ⅱ.コロナ禍を乗り越え、挑戦する中小企業を支援する税制措置
○中小・中堅企業のビジネスモデルの変革を後押しする税制措置
○中小企業向け設備投資減税、研究開発税制、所得拡大促進税制の延長・拡充・要件緩和
○デジタル化の促進
Ⅲ.消費税の価格転嫁の円滑化、インボイス制度への対応
○外税表示の恒久化、価格転嫁拒否行為の機動的な取り締まり体制の継続など、消費税の円滑な価格転嫁の実現
○消費税インボイス制度の導入凍結
○消費税制度の見直し
Ⅳ.円滑な事業承継の実現に資する税制措置
○事業承継税制の利用促進に向けた制度の改善
Ⅴ.地域の強靭化、地方創生に資する税制措置
○大規模災害に備える防災・減災対策や、地方創生・民間のまちづくり意欲を引き出す税制措置
Ⅵ.中小企業の経営基盤の強化に資する税制措置
○中小・中堅企業の活力強化に資する税制の見直し
○中小企業の経営基盤を阻害する税制措置への反対
○事業再生を支援する税制措置の拡充
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