事例2 “みこしのギネス世界記録®を持つまち”防府市を国内外へアピールしたい
防府商工会議所(山口県防府市)
山口県の瀬戸内海沿岸部にある防府市は昨年4月29日、防府商工会議所が主体となって「最大の連続した神輿(みこし)パレード」のギネス世界記録に挑戦。女性だけで担ぐ“おんなみこし”100基のパレードを成功させて、“世界一”を達成した。これを機に、“みこしのギネス世界記録を持っているまち”として発信し、世界に防府市をPRしている。
「来年は“世界一”に挑戦!」の宣言で全ては始まった
もともと防府市には、「おんなみこし」の歴史がある。「日本最初の天神さま」として知られる防府天満宮では、毎年11月に御神幸祭(ごじんこうさい・裸坊祭(はだかんぼうまつり)とも呼ばれる)という伝統的な祭りがあり、その翌日に「天神おんな神輿」が31年間にわたり行われているのだ。これを地域資源として活用するため、2015年のゴールデンウィークに商工会議所主導で始めた「春の幸せますフェスタ」のメイン事業として、おんなみこしを行うことになった。以来毎年、島根県松江市や愛媛県松山市など他県のおんなみこし団体を招き、総勢約400人が参加して祭りを盛り上げていた。
幸せますフェスタの「幸せます」には、山口県の方言で「幸いです、うれしく思います、助かります、ありがたいです、便利です」といった意味がある。これに「幸せが増す」という意味を付け加え、防府商工会議所が防府の地域ブランドとして11年に商標登録した。商工会議所では地域発の商品や地域イベントなどで「幸せます」商標の活用を推進しており、会員企業は申請・審査のうえ年間5千円で「幸せます」の商標を使うことができる。また15年からは、それまで市内でそれぞれ行われていたイベントに「幸せます」の共通テーマを持たせている。「春の幸せますフェスタ」もその一環として、15年以降、毎年開催されている。
そんな「春の幸せますフェスタ」のおんなみこしがギネス世界記録に挑戦することになったのは、17年のことだった。その年のフェスタが終了し、関係者たちによる反省会の席上、春の幸せますフェスタの実行委員長でもある羽嶋秀一副会頭が突然、「来年はギネス世界記録に挑戦するぞ!」と宣言したのがきっかけだった。
細かなルールの確認には粘り強い交渉が必要
そのときのことについて羽嶋副会頭は次のように振り返る。
「実は以前から、防府市の知名度を上げるためには、ギネス世界記録に挑戦するくらいのことをやらなければと思っていました。そこで反省会のあいさつの前に、喜多村誠会頭に『ギネス世界記録に挑戦したいと思っているのですが』と確認しました。すると会頭から『お前がやるならいいよ』とOKをいただいたので、あいさつでギネス世界記録挑戦を宣言したのです。その途端、会場のみんなは引いていましたけどね(笑)」
一方、羽嶋副会頭からギネス世界記録挑戦の話を突然聞いた喜多村会頭は、「大変なことになるなとは思いましたが、ギネス世界記録に挑戦という目標を掲げるのはいいことだと思いました。ギネス世界記録を達成することで、防府市の発信力を高めていければと考えたのです」。また、その話を聞いた尾中勝副会頭も「おんなみこしを3年やってきて、さらにこれを広めていくにはいいチャンスだと思いました」という。
みこしに関するギネス世界記録を調べたところ、パレード部門で「最大の連続した神輿パレード」という種目があった。しかし、その記録が認められるためにはさまざまな細かいルールがあり、またそのルールをどう解釈するかの判断が難しく、記録達成は不可能のように思われた。確かに、世界記録である以上、簡単に取れてしまってはあまり意味がない。実際、その種目では、まだ記録は残されていなかった。「そこで、まずはギネスワールドレコーズとのルールの解釈の確認やすり合わせから始まりました。これに関しては粘り強い交渉が必要で、商工会議所の事務方が頑張ってくれました」と羽嶋副会頭は言う。
どんなまちにも世界一のネタはある
参加者集めについても、商工会議所の職員全員で募集にあたり、会員企業や市内各所に声を掛けていった。最初はなかなか参加団体が集まらなかったが、商工会議所が繰り返し「ギネス世界記録を目指している」と話し、地元テレビ局でギネス世界記録挑戦のCmを流したことから、商工会議所の本気度が伝わり、参加希望団体が増えていった。
ギネス世界記録挑戦の当日、本番の前に参加者全体でパレードの練習をした際、みこしが途中の折り返し部分で渋滞を起こして足が止まってしまうというトラブルがあったものの、本番では見事に成功。みこしパレード終了の2時間後、ギネスワールドレコーズの公式認定員から記録達成が宣言された。
商工会議所で広報を担当する澤田健規副会頭は、ギネス世界記録達成がまちの知名度アップに貢献すると確信している。「防府市は東京五輪でセルビア共和国のホストタウンになっており、昨年のバレーボール世界選手権では、防府で事前練習したセルビア女子チームが優勝しました。おんなみこし世界一と併せ、防府は女性が輝くまち、女性が世界一になれるまちとアピールしていきたい」
最後に、まちおこしとしてギネス世界記録挑戦を考えている地域に対し、喜多村会頭はこうアドバイスする。「工夫をすれば、どんなまちにも世界一のネタはあると思います。商工会議所が主体となって大きな記録に挑戦することで、商工会議所も頑張っているなと、みなさんの商工会議所に対する信頼感も高まると思います」
ギネス世界記録達成により地域の一体感が生まれ、それがまちを盛り上げていく。それをまち の発展にどう生かしていくかが、今後の課題となる。
会社データ
名前:防府商工会議所
所在地:山口県防府市八王子2-8-9
電話:0835-22-4352
※月刊石垣2019年5月号に掲載された記事です。
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