事例6 2週間で「泉大津マスク」販売にこぎ着けた“毛布のまち”の底力
泉大津商工会議所(大阪府泉大津市)
泉大津市は、国産毛布で9割超のシェアを占める‶毛布のまち〟である。泉大津商工会議所は、そんな繊維製品の加工技術を活用して、「泉大津マスクプロジェクト」を推進。マスク不足の解消のみならず、地場産業の知名度向上と国産回帰にひと役買っている。
「泉大津マスク」が地場産業のPRに貢献
長年、地場繊維産業に携わってきた各企業の技術を活用して、一人でも多くの市民にマスクを届けられないか―。
泉大津市長の南出さんと同所会頭の臼谷さんとの会談の中で、新型コロナウイルスの感染拡大による深刻なマスク不足の解消を目指して、3月初旬に「泉大津マスクプロジェクト」を発足。地元の繊維製造事業者6社の賛同を得て事業を始動した。
「1日でも早く販売にこぎ着けるため、1週間後には各社にサンプルをつくってもらいました。当市は日本一の毛布の産地、そして屈指のニット産地ということもあり、それぞれの特徴が生かされた肌にも環境にも優しい手づくりマスクが集まり、上代の70%を下代とするルールの下に価格を決めました」と同所専務理事の下柳博さんは振り返る。
マスク製造と並行してマスク販売店も募集し、販路を確保した上で販売を開始したところ、用意した400組のマスクは初日にほぼ完売するという反響を得る。当初は製造者にも販売店にもリスクが生じないように、同所が製造者から商品を買い取って委託販売するという形をとったが、以降は販売店が製造者から独自に仕入れる形に切り替えた。
プロジェクトの立ち上げからわずか2週間で販売までこぎ着けた機動力やマスクの機能性などが、全国紙やテレビのニュース番組、NHKラジオなどで幅広く取り上げられたことも追い風となり、4月には製造者が11社に増えたが、全国から問い合わせが舞い込み、いっときは生産が追い付かない状況になった。
その後、徐々にマスク不足が解消されてきたことで、以前のような爆発的な引き合いはなくなった。しかし、今も「泉大津マスク」は恒常的な商品として人気を得ている。
「泉大津の繊維製品は、糸づくりの紡績工程から織り、染色、起毛、縫製などほとんどが分業体制で、各社が連携して製造しているのが特徴であり、強みでもあります。泉大津マスクを通じて、そんな地場産業の底力を広く知ってもらえたことは大きな収穫です。今後も繊維産地としての知名度向上を図り、国産回帰に貢献したい」と下柳さんは次なる展望を語った。
会社データ
泉大津商工会議所
所在地:大阪府泉大津市田中町10-7
電話:0725-23-1111
HP:https://www.izumiotsu-cci.or.jp/
※月刊石垣2020年11月号に掲載された記事です。
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