事例3 下請けのモノづくりから新たな付加価値の創造へ
刈谷商工会議所(愛知県刈谷市)
新型コロナウイルス感染症対策として、いち早くオンライン個別相談会や休業者向け社内研修に取り組んできた刈谷商工会議所。同事業を通じて、「モノづくりのまち」として発展してきた技術力とアイデアを生かした新商品が誕生し、販路開拓にも成功している。
コロナ禍を機に自社ブランド開発・販売を実現
刈谷市はトヨタグループ5社の本社が所在し、モノづくりを中心に発展してきた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、大手の工場が生産を休止・縮小したことで、まちの活気は一気に失われた。
そこで同所では、経営状況が激変する中小企業や小規模事業者を対象に、県下でもいち早く「新型コロナウイルス対策特別支援窓口」を設置。関係機関と連携して、融資や雇用調整助成金に関する相談会を開催してきた。また、社会保険労務士によるオンライン個別相談会も実施し、多くの声に対応してきた。
「当所の特長は、会員との距離感が近いこと。声が届けばすぐに動くし、意思決定も早いんです」と同所で事務局長を務める加藤善弘さんは説明する。
まさにその強みが生かされて誕生したケースが、ウイルス飛沫(ひまつ)の飛散を防止するロールフィルム式パーテーションだ。「自社ブランド製品をつくりたい」という配管業者の相談をきっかけに開発されたもので、その商品化にひと役買ったのが、刈谷市の委託事業として同所が創立60周年の2012年度から実施してきた「刈谷モノづくり大学」である。これは各分野の専門家を直接企業に派遣し、個々の企業が抱える課題を解決することを目的とした事業で、何度でも無料で指導が受けられる。
パーテーションはすでに多くのメーカーが商品化しており、いかに独自性を出すかが課題だったが、専門家のアドバイスを基に、‶使い捨て〟という新たな価値を盛り込んだ製品を完成させた。さらに同所が適正価格の付け方、マスコミへの情報発信やPR活動などを支援したことで、現在までに60セットを販売し、大口の引き合いも来ているという。
同事業を継続発展できた理由について、加藤善弘事務局長は「行政と一体となって地元企業を支援してきたことと、専門家と同行することで経営指導員の指導力向上につながり、知識が蓄積されたこと」と語る。さらに「当所の経営指導員が中小企業診断士や社会保険労務士の資格を取得するなど成長してくれた」と職員の資質向上につながったことを実感している。「新型コロナが収束後も、一層変化する時代の中で、企業が新たな付加価値を創造していけるように、私たちも引き続き関係機関と連携しながらサポートしていきたい」と加藤さんは力強く語った。
会社データ
刈谷商工会議所
所在地:愛知県刈谷市新栄町3-26
電話:0566-21-0370
※月刊石垣2020年11月号に掲載された記事です。
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