事例4 「人材マッチング事業」で新しい働き方を模索
塩尻商工会議所(長野県塩尻市)
塩尻商工会議所では、地元のJAや農業公社などと連携して、仕事減職種と人手不足農家をつなぐ「人材マッチング事業」を展開している。現在までに14人のマッチングが実現し、収入減を補う今後の新たな働き方として期待が寄せられている。
他業種での就業に満足感「いい経験ができた」
「3月後半あたりから、新型コロナウイルスの影響でお客さまが激減し、従業員を休ませざるを得ない事業者からの相談が増えてきました。地域の雇用を守るために、一時的にほかの場所で収入を得るしくみをつくったらどうかと考えました」と同所地域おこし協力隊メンバーの横山暁一さんは、人材マッチング事業を立ち上げた発端をこう話した。
休業となった事業所では、最低6割の休業手当が従業員に支払われるものの、家族や生活を支えるには十分とはいえない。一方、地域の農家においても、感染拡大防止のために実施された入国制限により、外国人技能実習生が来日できなくなり、繁忙期を控えて人手不足に頭を悩ませているという情報が入ってきた。
そこで同所は、休業となった事業所に声を掛け、農家で働く意思のある従業員の有無を把握して、JAや農業公社に情報提供をするようにした。その上で人材の受け入れを希望する農家につないでもらい、面談を行った上で契約するというしくみを構築した。
「事業の骨格が決まった後、正社員として働く人が他の事業所で働くことに法的な問題はないか、就業期間や1日の労働時間などをどう決めるかなど、目の前の問題をクリアしていきました」
こうして事業の立ち上げから10日後、第1号となる旅館従業員のレタス農家へのマッチングが成立した。
就労希望者は、同所の公式フェイスブックや横山さんの個人フェイスブックなども活用して募集したところ、会員企業の従業員だけでなく、個人事業主やアルバイト先が休業になってしまった学生など、幅広い層から問い合わせがあり、現在までに14人のマッチングが実現した。コロナ禍で先行きが見通せない中での雇用対策と、農家の人材確保に貢献している。
「今回、農家で就労した人の声を聞くと、皆『いい経験ができた』『見識が広がった』『機会があればまたやりたい』と口をそろえます。そうしたことも踏まえ、今後は農業分野だけでなく、より幅広い業種へのマッチングを可能にして、コロナ後の新しい働き方を模索していきたい」と横山さんはまちの活性化も視野に入れながら今後の目標を語った。
会社データ
塩尻商工会議所
所在地:長野県塩尻市大門一番町12-2
電話:0263-52-0258
HP:https://www.shiojiri.or.jp/
※月刊石垣2020年11月号に掲載された記事です。
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