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こうしてヒット商品は生まれた! リナビス

作業工程は細かく分かれており、その中に毛玉取りやシミ抜き、ほつれ直しなど“おせっかい”の工程も組み込まれている

兵庫県西脇市に創業し、60年近い歴史を持つ東田(とうだ)ドライ。市場規模の縮小が続くクリーニング業界の中で、同社は2014年、宅配クリーニング「リナビス」という新たな事業をスタートさせた。長年培った技術力に加え、いい意味での‶おせっかい〟なサービスの提供で顧客の信頼を獲得し、業績のV字回復を果たした。気になる‶おせっかい〟の中身とは―。

‶おせっかい〟というサービスで高い品質を提供する

昔からあるまちのクリーニング店は、営業時間内ならいつでも衣類の持ち込みや引き取りができる手軽さがメリットである。その半面、営業時間内に行けないとか、衣類の持ち運びが大変などのデメリットもある。

そうした問題を解決する手立ての一つが、宅配クリーニングである。インターネットで24時間いつでも手配ができ、都合のいい日時に集荷に来てもらえば、あとは仕上がりが届くのを待つだけだ。現在、宅配クリーニングを扱っている会社は複数あるが、品質の高さや顧客満足度でダントツの人気を獲得しているのが、「リナビス」を展開している東田ドライだ。

そのしくみはシンプルだ。ネットで「5点コース」「10点コース」「20点コース」から一つを選び、必要に応じて汗抜き加工、カビ抜き加工、はっ水加工などのオプションを付けて注文するだけだ。ネット注文は相手の顔が見えないために、「お気に入りの服を任せても大丈夫なのか」と不安な人に対しては―。

「当社では八つの『おせっかい』を提供することで、お客さまに満足してもらえる仕上げを心掛けています」とリナビスを立ち上げた同社社長の東田伸哉さんは胸を張る。

東田さんが言う「おせっかい」とは、①送料無料、②シミ抜き無料、③ボタン修理無料、④クリーニング無料相談、⑤無料12カ月保管、⑥毛玉取り無料、⑦再仕上げ無料、⑧おせっかい無料、の八つを指す。ほかのクリーニング店ではとても手が回らないような手間の掛かる作業を、全てサービスで行っているのだ。こうして高い品質を維持していることが、リナビスが多くの支持を集める最大の理由で、現在会員数約17万人、1日に届く衣類は3300枚を数えるまでに成長している。

「早い・安い」から「高価格・高収益」に転換して業績をV字回復

同社は1963年に地域密着型のクリーニング店として開業した。90年代に入り、スーパーの出店ラッシュに合わせてインショップ型のクリーニング店が急増する。同社もその波に乗って、11店舗を運営するまでに拡大した。先代社長の父親はクリーニング技術に長けた職人肌で、その仕上がりの良さから顧客をつかみ、94年には同社最大の売り上げを計上した。

「僕は2012年に入社し、1年目は下積みとしていろいろな仕事を覚えていきました。クリーニングの現場では、手早く作業のできる人が一番偉いんですが、仕事が多少早くても、業績が上がるわけではありません。こういうやり方ってどうなのかな、と……」

翌年、そんな違和感から同社の経営状況はどうなっているのだろうと決算書を見て唖然(あぜん)としたという。ピーク時と比べて1億円も売り上げが減少し、赤字に転落していたのだ。そんな状態を放置していた先代と数カ月にわたって激論を交わした。その結果、東田さんは社員の前でこう宣言した。「今後は僕が経営方針を決めます」

こうして経営に乗り出した東田さんが着目したのがネットだ。当時、宅配クリーニングで業績を上げていた東京の会社のビジネスモデルを参考にしくみを構築し、14年からリナビスをスタートさせた。

「当初は『安い・早い』をコンセプトに掲げましたが、一向に注文は増えませんでした。そもそも、店に集まる衣類の約6割はワイシャツやスーツなどビジネスシーンで着る服なんですが、それらの平均単価は低い。『安い・早い』では収益は上がらないと実感しました」

高価格・高収益に転換しようと東田さんが考えたのは、1枚いくらではなく10枚でいくらと設定する方法だ。中身が何であれ、10枚一律1万1700円で請け負う。ワイシャツ10枚だと割高だが、ダウンやウールコートが10枚ならかなり割安となる。

さらに「お客さまに喜んでほしい」との思いから、長年家業で行ってきた無料でのシミ抜きやほつれ直しなどのサービスを「おせっかい品質」としてコンセプトに掲げ、16年にしくみをリニューアルした。すると注文が急増して事業は軌道に乗り、同年のリナビスの売り上げは目標の1億円を達成。17年には3億、18年には6億、19年には11億と倍々ゲームで伸びていった。

新たなサービスの提供に向けて管理体制を強化中

「今年は新型コロナの影響で人々の生活環境が激変しましたが、リナビスの需要は変わっていません」と東田さんは今年を振り返り、こう続ける。「ただ、昨年は事業をサイズアップし過ぎて、さまざまな課題が噴出しました。そこで今年はペースダウンして、管理体制の見直しに取り組んでいます。それを21年いっぱいで完成させて、22年から今とは違うサービスを提供する予定です」

その中身の一つに挙げたのは、クレーム対応だ。お客さまは品質を期待して利用しているだけに、少しのミスでもクレームにつながる。それを減らすために、どの工程の何が原因でミスが発生したかがわかるように、バーコード管理を徹底している。今後は、会社に届いた感謝の手紙やメールも、どの工程の誰がやった作業かをバーコードでわかるようにして、品質とサービス、さらに従業員のモチベーションも高めていきたい考えだ。

会社データ

社名:株式会社東田ドライ(とうだどらい)

所在地:兵庫県西脇市下戸田93-5

電話:0795-22-5654

HP:https://rinavis.com/

代表者:東田伸哉 代表取締役社長

設立:1968年

従業員:167人

※月刊石垣2020年11月号に掲載された記事です。

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