事例3 女性目線を生かした人材活用術でスタッフの働きやすさを提唱
cozyroom(兵庫県姫路市)
整理収納コンサルタントとして活躍するcozyroom代表の笹田奈美子さんは、兵庫県姫路市を拠点に個人宅の整理収納や職場の環境改善をサポートしている。
育児や介護などで、やむなく仕事の第一線から退いている人が働きやすいしくみをつくり、既存の〝会社〟にとらわれない働き方で、cozyroomを運営している。
働きたくても働けない優秀な人材をスタッフに
「片付け代行サービスだと勘違いされがちですが、お客さま自身が片付け上手になり、心地良く暮らせることをサポートするのが、整理収納コンサルタントの役割です。起業当初は個人宅を対象にしていましたが、今は企業、特に中小企業の職場環境の改善にも力を入れ、整理収納コンサルティングやセミナー、講演などを、兵庫県姫路市を拠点に行っています。地域密着型の事業展開です」
そう語るのはcozyroom代表の笹田奈美子さん。2014年に開業し、初年度から黒字経営を続ける凄腕だ。開業時は単独で活動していたが、現在スタッフは4人に増え、互いの得意分野を生かし合いながら活動している。
「私も家に帰れば2児の母として家事、子育てに追われる日々です。他のスタッフも子育て中の女性ばかり。私自身、育児を理由に職場を離れた経験があり、子育てや介護を理由に働きたくても働けない人、特に女性をたくさん見てきました。無理なく働ける環境をつくりたい。そう考えて、私と同じ整理収納アドバイザー1級の有資格者で、熱意ある人に声を掛けてはスタッフを増やしています。1年に1人のペースで、お互いに都合のいいタイミングで採用しています」
終日働くことはできないが、午前中だけ、平日だけなど個々の事情を考慮して、個人宅の片付けサポートを依頼している。スタッフ間の業務連絡は主にオンラインで行い、18年からは顧客管理のためのシステム「Kintone」を導入して、さらに円滑な情報共有を図っている。会社という空間がなくても、事業が効率よく展開できる仕組みだ。
個々の事情をくみ取り年2回の個別面談を実施
開業時は単独で活動しており、整理収納コンサルタントは個人宅や企業を直接訪ねることが多いため、事務所の必要性はそれほどない。「資金もなかった」と苦笑する笹田さんだが、「会社」という母体がないと、事業者としての信用を得にくいのも事実だ。
そこでJR姫路駅近くのコワーキングスペース「mocco」とのバーチャルオフィス契約で住所利用をしており、自社ホームページも丁寧につくり込んでいる。所在地やホームページの印象が会社のイメージに直結すると考え、会社を構えないからこそブランディングには注力している。
「スタッフは、私のアシスタントとして現場に来てもらっていましたが、今は4人中2人がリーダーとして成長しています。リーダーにアシスタント1人という2人体制で個人宅に訪問してもらっています」
さらに女性を取り巻く環境は変わりやすい。子どもの入学や卒業、受験、体調の変化など、さまざまな事情を踏まえて年2回、半年単位で個人面談を行い、個々の働きやすさの見直しを図っている。女性目線ともいえるきめ細やかな対応が、働きやすさにつながっているようだ。
「リーダーになる、ならないも個々の意思や都合を尊重しています。会社の離職につながる一例として、本人の望まない昇格や異動があります。仕事ができるから上のポジションにするという一方的な判断ではなく、ストレスのない働きやすさを一緒に考える。生き生きと働いてもらうことが効率アップ、業績アップという結果を生み出してくれると思うのです」(笹田さん)
どんな業種も女性の働きやすい環境を整えることが、会社全体の働きやすさにつながるという。
オンラインを活用してコロナ禍でも柔軟に対応
そもそも笹田さんが企業向けの整理収納コンサルティングを始めたのは約2年前、「ひょうご仕事と生活センター」のオファーで職場の環境改善の講師役として企業訪問をしてからだ。5Sとは整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字をとったものだが、単に職場環境をきれいにするだけの美化活動ではない。片付けることで職場の抱える課題を解決することを目的としている。
「個人宅の場合は、悩みを解決したい方がお客さまですが、会社はそもそも興味がない人もセミナーに参加されるので、いかに自分のためになるかを理解してもらうかが腕の見せ所です。製造工場とオフィスではアプローチが違うので、各社独自の方法を生み出し実践できるまでを全力でサポートします。業種問わず、悩みとして多いのが書類整理。ドキュメントスキャナーを使ってデジタル化するなど、ファイリングや作業効率化システムの導入などを提案しています」
人の役に立っていることが仕事のモチベーションになっていると語る笹田さんだが、昨春からの新型コロナウイルスの影響は大きい。緊急事態宣言の発令時は講座や講演が全てなくなり、休校期間は個人宅の依頼も激減したという。
「19年にWeb会議システムの『Zoom』の使い方講座を受けていたこともあって、講座やヒアリング、デジタル整理に関する相談はいち早くオンラインに切り替えられました。デジタル整理の相談は、リモートワークが急増したためか、コロナ禍前の4倍増です」
オフライン、オンラインの両軸の事業展開が今後のスタンダードになると捉え、「新しい生活様式」にも柔軟なスタンスをとる。
「コロナ禍で働き方が多様化し、ワークライフバランスへの意識も高まっています。中小企業の多くは、職場環境の改善が片手間、気になった人のみ、手付かずのどれかに該当する状況なので、お役に立てる場はまだまだありそうです」そう言ってさわやかに笑った。
会社データ
社名:cozyroom(こーじーるーむ)
所在地:兵庫県姫路市南町76 姫路城陽ビル4F
電話:090-8821-0513
代表者:笹田 奈美子
スタッフ:4人
※月刊石垣2021年1月号に掲載された記事です。
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