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こうしてヒット商品は生まれた! もりのしいたけ農園

日本では珍しかったしいたけの人工栽培法を開発し、80年以上にわたってきのこ類の種菌をメインに、食品や園芸商品などにも事業を広げてきた森産業。きのこのパイオニアである同社が、2000年に発売したきのこ栽培キット「もりのしいたけ農園」が、この4~5年で急速に売り上げを伸ばし、特に昨年から飛躍的な売れ行きを見せている。

栽培環境を整えるだけで約50個のしいたけが収穫できる

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年、多くの人が不要不急の外出を控えるようになり、自宅で過ごす時間が増えたことで、生活スタイルは大きく変わった。そうした状況の中、新たにトレンドとなったのが「巣ごもり消費」だ。これは自宅にいながら買い物をしたり、インターネットで娯楽を楽しんだりすることを指すが、こうした消費行動の広がりによって注目を集め、急速に売れ行きを伸ばしたのが「もりのしいたけ農園」だ。

同商品は、長年きのこ類の種菌を研究・開発・販売してきた森産業が一般家庭用に開発した、しいたけ栽培キットである。圧縮した広葉樹のおがくずにしいたけの種菌を植え込み、約120日間熟成させた栽培ブロック(菌床)が商品本体だ。購入後それを袋から取り出し、サッと流水で洗い流したのち、付属の栽培袋に入れて直射日光の当たらない場所に置いておく。1日1~2回、霧吹きで全体が軽く濡れる程度に水やりすると、5日ほどでしいたけの芽が出てくる。多いときは100個ほど芽が付くそうだが、親指くらいの大きさになったら間引きを行い、10~15℃の温度で管理すると、一つひとつが大きく成長して収穫可能となる。収穫が終わったら菌床を2週間ほど休養させたのち、再度水に浸してから栽培袋に入れておくと、2回目の発芽が始まる。この工程を繰り返すことで計3回の収穫ができ、栽培環境にもよるが、トータルで50個前後のしいたけが採れるという。

「成長が早いので、育つ様子を間近で見ることができ、収穫後すぐに料理に使えるのが特長です。自分で育てる以外にも、子どもの食育やプレゼント用に買い求める人が多いですね」と開発を担当した同社GB(グリーンビジネス)課課長の津久井壮介さんは説明する。

育てて収穫し味わう喜びが得られると口コミで拡散

同商品が発案されたのは1999年。しいたけ栽培の専門農家に販売していた商品を、一般家庭でも手軽に栽培してもらい、味わってほしいと考えたことが開発の発端だという。同社にとって初めての一般消費者向け商品である。しかし、販売先が変わることによって、同じ商材でもつくり方は根本から変わってくる。

「きのこ類の生育は気温に大きく関わっているので、基本的に年2回しかつくりません。それを通年で栽培・収穫ができるように品種や品質の改良を行い、ようやく商品化にこぎつけました」

2000年秋に販売を開始したところ、問題が持ち上がる。出荷する段階では発芽していなくても、店頭に陳列されている間に箱内で発芽してしまう事案が発生したのだ。しいたけは特性上、温度がスイッチの役割を果たし、17~18℃を下回ると発芽しやすくなる。そのため販売店の営業時間中はよくても、営業時間外に空調が止まると温度が下がり、発芽が促されてしまうのだ。また、家庭での栽培環境の違いによっても、発芽にバラつきが出てしまうこともわかった。

「やはり生き物なので、保管や栽培環境によって発芽の仕方や生育スピードが微妙に変わってくることが悩みの種でした。そこで製造方法を地道に見直していきました」

さらに、販売店には適切な保管場所や品出しの仕方をアナウンスしたり、消費者向けには栽培の手順を丁寧に記した説明書を商品に添付するなどした。その甲斐もあってトラブルは減っていき、徐々に売れ行きを伸ばしていく。同商品を購入した人は、リアルタイムでしいたけの成長過程を見ることができ、収穫する喜びや味わう楽しみが得られるため、自発的に口コミが拡散していった。

「当社ではSNSは運用していませんが、育てた達成感と見た目がSNSで共有しやすい体験型商品だったことが功を奏しました」

同社ではリピート購入につなげる工夫として、家庭できのこを育てるコツをまとめたネットサイト「きのこ栽培塾」を立ち上げたり、百貨店の催事やイベントの出店、メディアへの露出を増やすなどのPR活動を続けた結果、過去5年間で売れ行きが1・7倍に拡大する。さらに、昨年は巣ごもり消費の広がりにより、年間販売数が一気に15万個を突破した。

シリーズ商品を増やしてきのこ栽培をもっと身近に

業界トップレベルのきのこ菌株保有数を誇る同社は、それらを交配しながら世の中のニーズに合った商品を世に送り出してきた。近年では一般家庭向けの「きのこ栽培キット」にも力を入れており、ナメコ、ヒラタケ、エリンギ、エノキタケ、キクラゲなどシリーズ商品が続々と登場している。ダントツの人気はしいたけだが、その次によく売れているのはキクラゲだそうだ。ちなみに、しいたけの栽培期間は2~3カ月だが、ほかのきのこ栽培キットはさらに1カ月程度栽培期間が長いという。

「きのこ類は水溶性食物繊維が豊富なので、腸内の善玉菌を増やす働きにも注目が集まっています。しかも低カロリーでおいしい。今後もさらにインパクトのある商品を開発していきたい」と津久井さん。

閉塞感のある日々の中で、にょきにょきと芽を出し、育っていくしいたけの姿に、購入者は癒やしも感じているに違いない。

会社データ

社名:森産業株式会社(もりさんぎょう)

所在地:群馬県桐生市西久方町1-2-23

電話:0277-22-8191

HP:http://www.drmori.co.jp/

代表者:森裕美 代表取締役社長

設立:1943年

従業員:235人

商品のお問合せは

【グリーンビジネス課】

群馬県沼田市町田町1600

TEL:0278-22-1455

※月刊石垣2021年3月号に掲載された記事です。

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