アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 環境ビジネス次のステージへ

中国の著名ブランドのペットボトルが砂浜に(福岡県二見ヶ浦で)

地球温暖化対策として世界的に「カーボン・ニュートラル」を目指す動きが加速しているが、今、世界はもう一つ深刻な環境問題に直面している。マイクロプラスチック問題である。私たちの生活に欠かせない石油起源の多様なプラスチックは、自然界ではほとんど分解されず、形が崩れて小さな破片になったとしても、永久に生態系の中に残る。大きな岩が雨風、川の流れなどで長い時間をかけて、細かな砂の粒子に変わっていくようにプラスチックも最終的にナノ・メートル単位の微粒子になる。

プランクトンと誤認した魚介類がそれを体内に取り込み、それを食べた人の体にも蓄積されていく。風に乗れば大気中のPM2・5以下の汚染物質として、肺に取り込まれるようになる。二酸化炭素には回収・固定化の道があるのに対し、マイクロプラスチックは回収が極めて困難である点が恐ろしい。

九州や西日本の海岸に中国や韓国のペットボトルが多数打ち上げられているように、プラスチック汚染に国境はない。海岸の掃除や海中のプラスチックを回収する活動も活発になっているが、ボランティアのみでは効果は限られる。プラスチック、とりわけ既に海洋や陸地に投棄されたものの回収は政府の取り組みと民間ビジネスの両面から進める必要がある。

カーボン・ニュートラルが植林から植物由来の製品やエネルギー、素材の軽量化、省エネなど幅広いグリーン・ビジネスを創造し、大きな市場を形成したように、マイクロプラスチック対策も回収のための新技術や生分解性プラスチックなど大きな市場をこれから生み出す。それが途上国を含めたグローバルな取り組みに発展することで、アジアで大きなビジネスとなるだろう。

生分解性プラスチックの原料となるトウモロコシ、サトウキビ、イモ類などはアジアで広く栽培されており、カップやストローに加工される竹類も東南アジアに多い。アジアには多様でコスト競争力のある原料立地型プラントの可能性が広がる。

途上国の第1次産業のプラスチック投棄を減らす意味では、漁網や農業用フィルムの回収・再生事業も大きな意味を持つ。また、ペットボトルやプラスチック容器の回収事業は物流だけでなく、子どもたちへの環境教育も重要。いずれも日本企業が関与し、小さな投資でも事業化できる分野だ。マイクロプラスチックという災いを転じるプロセスに、中小企業こそ知恵と技術を提供していけるだろう。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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