岡山県の最も南に位置する玉野市。30年ほど前までは、玉野市は本州と四国(高松市)を結ぶ宇高国道フェリーの四国への玄関口として栄え、また三井造船企業城下町として3分の1が造船関連世帯といわれた時代もありました。そんな玉野市で、私は30年前に岡山市民病院を退職し、介護事業を起業しました。介護保険制度創設の10年前のことでした。
介護事業も例外ではなく、社会環境の変化に伴う企業経営の対応(マーケティング)が喫緊の課題となっています。顧客が何を望んで同業他社の中から自社を選んでくれているのか。そして、顧客も気付いていない真のニーズは何なのか。衆知を集め、自社事業の定義をすることこそが、リーダーの役割となります。
20世紀の半ば、米国の鉄道会社のほとんどは、「わが社は鉄道会社だ」と言い切ってしまい、自動車と旅客機の普及によって次々に倒産しました。「わが社は人と荷物を目的地に運ぶ移動サービス業だ」と顧客ニーズをキャッチした定義をしていれば、タクシー、バスなどを付随事業化していたはずです。同じく、ハリウッドの映画会社は一社を除き、その全てが「わが社は映画製作会社だ」と言い切り、大多数が倒産しました。当時、顧客ニーズから、自社事業を「わが社はエンターテインメント会社だ」と定義し、テレビの普及でアニメを、そしてテーマパークにも進出した会社がありました。この会社のトップが、ウオルト・ディズニーです。
さて、これまで玉野を支えてくれた造船業は、造船を国策とする中国・韓国勢に苦戦を強いられる中、地場を支える中小企業こそが自社事業の再定義を行い、存続と発展を目指して進まなければなりません。私が目指すものは、弊社も含めた玉野の商・工・サービス業の再始動といえます。
また例に漏れず、玉野商工会議所においても先輩方が培ってこられた基盤の上に、もう一つ、二つ何かを上乗せしていかなければなりません。商工会議所は会員から会費のみならず、運営にも尽力いただき、今日まで発展してきました。会員が望むものは何か、会員でさえ気付かない新たなニーズとは何なのか。融資の斡旋(あっせん)や補助金・助成金の受け付け、経営相談や申請手続きの窓口としてだけではなく、弊社も含めた企業の確たる強靭(きょうじん)さ、粘り強さ、社員への思いやりをもって、年々歳々少しずつでも会員事業所が発展できる環境づくりに若輩ながら尽力してまいります。
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