障がい児を持つ家族への安らぎの場を目指して
特定非営利活動法人アイル 代表理事 西方 啓子(にしかた・けいこ)
自身の経験を生かして地元の秋田で起業を決意
当社は、0歳から幼稚園児までの児童発達支援と、小学生から高校生までの障がい児の通所やショートステイができる事業所として、保護者が安心して子どもを委ねられる安らぎの場を提供しています。
北海道に住んでいる孫が、自閉症スペクトラム症候群で児童発達支援事業所へ通所することになりました。子どもの頃からダウン症のいとこと育った私は、秋田でたくさんの障がい児施設や障がい者施設を見てきましたが、孫が通所している北海道の事業所では、支援体制が整っていて驚きました。そこに通う子どもたちはとても楽しそうに過ごしていたので、今は、障がいがある子どもたちやその家族の助けになる施設がある、ということを知りました。
ところが秋田へ帰郷後、県内にはショートステイは全くなく、児童発達支援事業所さえない地区があることが分かりました。障がい児を持つ家族は、精神的・肉体的にも解放される時間を持つことができません。また、冠婚葬祭などでは、周りの目が気になる状況であっても、参加しなくてはならない場合もあります。そんな時に宿泊で預かってもらえる場所があればいいのに、と悩んでいる家族がいるに違いない、そういった人たちの力になりたいと思ったのが、秋田で起業を決意したきっかけでした。
支援体制を整えた息抜きの場を提供
当社では、研修を受けた専門員によるパソコン学習や、スポーツクラブと連携した体操教室などのサービスを取り入れてきました。体を動かすことは、発達を促すだけでなく、ストレス解消にも効果を発揮します。これは家族の負担軽減につながる大切なことです。
また昨年4月には、発達障害による不登校の児童のためのフリースクールを行う合同会社を立ち上げました。これまでのフリースクールでは、グレーゾーンのある児童は通所が難しく、勉強の準備も親がしなくてはならない状況で、送迎も含め親子に負担が掛かっていました。今後はこれらのサービスのほか、対人関係の促進を目的としたソーシャルスキルトレーニングによる療育や、簡単につくれるメニューの調理から片付けまでをみんなで協力して行う食育、さらには重症心身障がい児のメディカルケア・入浴などの療育にも力を入れていく予定です。
障がい児を持つ家族は、本人のことばかりではなく、仕事、家族、兄弟のことなどのさまざまな悩みを抱え、周りに理解してくれる人も少なく、日々もんもんとしている人が多くいます。
子どもが学校に行けないという状況だけでも親の精神的な負担は大きく、苦労しているにもかかわらず、落ち着ける場所が見つからない。そんな人々を手助けし、子どもたちの笑顔と家族からのありがとうの言葉を頂けるよう、これからも療育とその家族のレスパイトケア(息抜き)の場を提供し、児童発達支援事業者として地域に貢献していきたいと思います。
会社データ
社名:NPO法人アイル
所在地:秋田市保戸野桜町15-39
電話:018-866-1121
創業:2016年
事業概要:児童発達支援、放課後等デイサービス・フリースクール、障がい児童ショートステイ
【秋田商工会議所】
放課後等デイサービス・フリースクールHPはこちら
※月刊石垣2021年8月号に掲載された記事です。
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