アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 アジアのオリンピック

閉会式で小池百合子・東京都知事(左)から手渡された五輪旗を振るIOC・バッハ会長 写真提供:共同通信社

「東京オリンピック2020」は無事に全日程を終え、閉幕した。コロナ感染が拡大する中での開催には反対論も強く、会期中に東京都などに緊急事態宣言が改めて発出されるなど苦難のオリンピックだった。だが、世界から206カ国・地域が参加し、世界中で多くの人がテレビ中継に目を奪われた。やはりオリンピックは世界をつなぐものであり、人類共通の関心なのだ。また、オリンピックを通じて、コロナ感染は人類が協調して立ち向かわなければならないことも確認されたようにも感じる。

さて、東京は2回目の夏季五輪開催都市となり、日本は夏季、冬季合計で4回の五輪を行った。韓国は夏季、冬季1回ずつ、中国は夏季に続き、来年、冬季を北京で開催する。こうなると次はアジアでどの国が五輪開催国となるかが注目される。東京五輪開催中に2032年夏季五輪が豪ブリスベンに決まったことで、開催地への関心が一気に高まった。

経済力で見れば、インドが次と目され、実際、経済の中心、ムンバイが32年大会への立候補の意思も示していたが、ブリスベンに決まってしまった。首都ニューデリーは独立から2世紀目に入る48年の夏季五輪の開催を目指している。インドネシアはジャカルタがやはり32年の夏季五輪開催を狙っていたが、脱落した。

ただ、夏季、冬季ともに開催費用が激増しており、費用負担に耐えられる国・都市は減っているのが現状だ。五輪は1964年の東京、88年のソウル、2008年の北京のように「新興国が先進国の仲間入りをする登竜門」という位置付けから離れつつある。それでもアジアの国にとって、開催の意味があるのは「国内改革」と「スポーツ振興」の二つにつながるからだ。政治、経済、社会インフラなどを途上国レベルに留めていては五輪開催は困難であり、開催を機に国をバージョンアップするという意義は大きい。また、初等教育段階から運動を根付かせれば、国民の健康水準は上がり、グローバルに共有できるものが増えるメリットがある。

今回の東京五輪では各国選手団のユニフォームが目を引いた。日本選手団のアシックスはデザインだけでなく、リサイクル原料という点も話題になり、ナイキ、FILA、ユニクロなどメーカー間の競争も興味深かった。オリンピックはビジネス的な意味も実は大きい。アジアの次の五輪開催国を頭に思い浮かべながら、アジア市場への事業展開を改めて構想してみたいものだ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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