東日本大震災からの復興の担い手となる東北各地の若手経営者の取り組みと思い描く10年後のビジョンを紹介する
大災害が発生した後、ライフライン復旧のために最初にやらなければならないのが廃棄物処理である。宮城県仙台市を中心に廃棄物関連事業を行うSKグループ代表の齋藤孝志さんは、東日本大震災当時、自社の施設も被害を受けながら復興に尽力し、その後も社会貢献活動を積極的に行っている。社員同士や企業間のつながりを大切にする同グループの思いを聞いた。
循環型社会を担うグループ事業と社会貢献の両輪で
SKグループは、古紙回収や廃棄物処理などを行うサイコー、廃棄物管理コーディネートを行うSKトレーディング、リサイクルポイントシステムを運営するステップスナイン、グループ内の経営計画推進と人事や広報などを担うSKホールディングスの4社から成り立っている。
2012年から代表を務める二代目の齋藤孝志さんは、社員も社員の家族も誇りに思うような会社づくりをしたいと考えてきた。経営方針は「人との出会いを大切にし社会に信頼される企業であること(中略)社員とともに成長し『しあわせ、ゆとり、豊かさ』を味わえる企業であること」とし、それを実践している。
齋藤さんは経営方針などを社員と共有するため「価値観の共有」を重視している。事業以外でも価値共有をしたいと、社員と対話の機会を増やし、一緒に畑で野菜づくりをするなど、社員がより働きやすい仕組みづくりや、社員の個性を伸ばす教育に力を入れている。
グループ理念には「事業活動と社会貢献活動で人々のくらしをより豊かに」を掲げている。例えば、家庭ごみ収集車にAEDを搭載し、ドライバーには救命救急講習を受けてもらうなどの活動を意識的に行っている。
「事業で利益が出たから社会貢献をするのではなく、事業と社会貢献を両輪で回していくからこそ、われわれがこの地域で仕事をさせていただく価値がある」と齋藤さんは社員にも常に話している。こうした活動が評価され、同グループは多くの団体から表彰されている。
経営方針や理念にある言葉を具体的な行動に移したのは齋藤さんだが、その内容は先代から言われてきたことだった。それらの大切さを改めて実感させられたのが、10年前の東日本大震災である。
震災で壊滅的な被害もつながりの大切さ実感
同グループは1973年、サイコーの創業からスタートした。この社名は創業者の齋藤孝三さんの名前「齋孝」が由来で、「SK」は創業者の頭文字である。
現社長の齋藤さんは専門学校を卒業後、家業である父の会社へ入社した。当時、社員は十数人の小さな規模だった。古紙回収から始まった事業は、廃棄物やリサイクルに対する社会全体の変化に伴い、地域に必要とされて成長した。
齋藤さんは2009年、サイコーが行っていた廃棄物管理コーディネート事業を新会社へ移管し、リサイクルポイントシステム運営を開始するなど、事業を広げた。
そして、社長就任の準備をしていた11年、東日本大震災が起きた。自社で最大の仙台港資源化センターが壊滅的な被害を受けたが、齋藤さんは「何があっても社員の雇用を守ろう」と思った。
廃棄物処理は、ライフライン復旧のために最初にやらなければならない。社員は自宅が被災しても震災の翌日から出勤してくれて、ありがたかった。被災地以外でつながりのある企業は「応援するよ」と物資を送ってくれた。
「つながりの大切さ、社員の大切さを改めて実感しました。われわれが地域のために何ができるかを再確認できたと思います」
地域で展開の事業モデル 企業と連携して全国へ
「震災時に今あるものをどう生かして、まちをどうするか考えました。今も思いは変わらず、地域を良くしたいと強く思っています」
齋藤さんは20年、SKホールディングスを設立してグループ4社の役割を明確にした。自社が持つリソースを整理すると、廃棄物や資源物回収で循環型社会の一翼を担うのは事業の一つで、幅広い排出業者とつながりがあるのも大きなリソースと気付いた。
「今までは廃棄物を運ぶことばかりに目が行きがちだったが、自分たちが見えていなかったことを、いろいろな企業と連携しながら実現していきたい」と企業の連携について可能性を感じている。
例えば、家庭ごみを収集しながら高齢者の見守りサービスなどができるようになれば、付加価値は大きい。このように各地域でできる事業モデルをつくり、それを全国展開したいという。その際に生かしたいのが商工会議所のつながりだ。
「商工会議所に加盟しているだけで、仲間意識が生まれます。つながっているという意識は大切です。企業同士が手をつないだら、より良いことができます」
会社データ
社名:株式会社SKホールディングス
所在地:仙台市宮城野区岩切分台1-8-4
電話:022-211-4877
代表者:齋藤孝志 代表取締役
従業員:230人(グループ合計)
【仙台商工会議所】
※月刊石垣2021年11月号に掲載された記事です。
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