日本商工会議所の三村明夫会頭は4日、定例の記者会見で、今年の春闘における中小企業の賃上げについて、「中小企業の賃上げのためには、サプライチェーン全体で『取引価格適正化』『生産性向上』という二つの条件が整うことが必要だが、これには時間がかかる」との考えを表明した。また、「賃上げできる事業者には取り組んでほしいが、大部分はなかなか難しい」と指摘。「まずは賃上げできる環境を整えることが最優先だ」との考えを示した。
三村会頭は、中小企業の賃上げには、原資となる付加価値を増やすこと、そのために「サプライチェーン全体で『取引価格適正化』と『生産性向上』が必要」との考えを表明。取引価格の交渉については、「現時点ではまだ具体的な取引価格の是正までには至っていない」と指摘し、「まずは賃上げできる環境を整えることが最優先事項だ」と述べた。また、「3割くらいの企業は業況が良い。そのような企業にはぜひとも賃上げしてもらいたい」と強調。一方で、多くの事業者にとっては、賃上げに向けた環境整備には時間がかかるとの見方も示した。
海外の物価上昇については、「原油などエネルギー価格と電気代、小麦粉、鉄や非鉄金属など原材料価格、運賃などのサービス価格も上昇している」と指摘。「この圧力は今後も続く」との見方を示した。
一方、国内の物価については、「足元では、企業物価指数(前年同月比)が約9%上昇しているが、消費者物価指数は0・5%程度しか上昇していない」と指摘。「日本の物価がデフレマインドを背景に、本来あるべき物価レベルより相当程度低く抑えられてきたことから、物価上昇自体は自然な現象である」と述べ、消費者物価指数について、日銀が目指す2%程度の上昇を容認する考えを示した。
価格転嫁については、「パートナーシップ構築宣言」の推進により、「コストアップをサプライチェーン全体で適正に負担しようとする機運が徐々に広がっている」と変化の兆しがあることに期待感を表明。足元の物価上昇を契機に「パートナーシップ構築宣言」の活用が必要との考えを改めて示した。
オミクロン株の感染拡大に対応した中小企業のBCP策定については、「BCPは『できる』『できない』の問題ではなく、必要不可欠。対応しなければならない問題だ」と強調。「商工会議所でもできる限りの支援をしているが、最終的には、個別の企業が問題意識を持って真剣に取り組むことが大切だ」と述べた。
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