Q 当社は、小規模企業です。スキャナ保存制度が緩和され、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したものも認められるようになりましたが、領収書の画像を保存しておけば、紙の領収書は廃棄してよいのでしょうか。また、電子メールで受け取った請求書などは印刷してスキャナ保存しておけば問題ないでしょうか。
A 2021年の税制改正によりタイムスタンプ要件が緩和され、相互牽制(けんせい)や定期検査などの適正事務処理要件も廃止されたため、スキャナ読み取り後は原本の廃棄が可能です。22年以後は、データで受け取った書類の出力保存は不可となります。印刷してスキャナ保存したものも認められませんので注意してください。
昨今、経済のデジタル化などを背景に電子帳簿保存法が改正され、領収書などの書類を電子データで保存するスキャナ保存制度も大きく見直されてきています。2021年度の税制改正で紙の請求書や領収書などの原本の取り扱いが大幅に緩和され、中小・小規模企業も取り組みやすくなりました。
スキャナ保存制度の対象となる書類とは
スキャナ保存は、貸借対照表などの決算関係書類以外の紙の国税関係書類が対象です。スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像が認められるものは、「領収書、契約書、請求書、納品書などの重要書類」と「上記以外の見積書、注文書などの一般書類(資金や物の流れに直結、連動しない書類)」です。
スキャナ保存とする対象書類は自社で扱っている書類のボリュームや管理状況から決めますが、スキャナ保存を利用した電子帳簿の備え付けを開始する前に必要とされていた所轄税務署長に対する申請書の提出・承認制度は改正により廃止となりました。
2022年以降のスキャナ保存要件
①スマートフォンやデジタルカメラで領収書やレシートを撮影した後、すぐに廃棄処分することはできず、税理士などの税務代理人による検査が終わるまでは保存しておかなければなりませんでしたが、原本はスキャナ保存後、廃棄が可能になりました。
②領収書画像には、認定事業者が発行する「タイムスタンプ」を付加して保存する必要があります。タイムスタンプの付与期間は「最長約2カ月と概(おおむ)ね7営業日以内」に緩和されました。また、電磁的記録について訂正または削除を行った場合に、これらの事実および内容を確認することができるシステムを利用する場合には、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができれば、タイムスタンプを付与しなくてもよいことになりました。
③領収書の受領者以外の別の者が原本と画像を見比べて確認するなど、各事務をそれぞれ別の者が行う相互牽制、保存状況・運用状況を検査する体制・運用も不要になり、定期的な検査を税理士に依頼して顧問税理士との2人で対応する必要もなくなりました。
④電子データで受領した書類は注意が必要です。今後はデータで受け取った書類を出力しての保存は「不可」となります(ただし23年末まで宥恕(ゆうじ)措置あり)。スキャナ保存も認められません。真実性の確保、改ざん防止の観点から電子データを書面などに出力したもの自体が電子帳簿保存法に基づく保存方法とならないからです。
スキャナ保存には今後も留意を
スキャナ保存の要件は緩和されても、速やかな電子化、適正な保存が求められる点は変わりありません。改正によってスキャナ保存の運用の負担が軽減する一方で、データ改ざんが簡単にできるようでは意味がありません。罰則規定も強化され、保存要件を満たさないと領収書として認められませんので十分注意してください。今後もこうした改正に応じて、社内規程の整備や、入力・定期検査方法などの運用ルール改定を適切に実施し、徹底していくことが重要です。 (中小企業診断士・竹内 敏則)
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