日本商工会議所の三村明夫会頭は12日の定例記者会見で、円安の進行と資源価格の高騰が中小企業の経営に与える影響について、「足元の円安が続けば大きな経営上の問題となる」と述べ、政府などに円安が日本経済全体に与える影響を明確に示すことの必要性を強調した。今般、成立した経済安全保障推進法については、安全保障上の必要性と経済活動の自由をバランスさせることの重要性を指摘。政府に対しては、「制度の具体化に当たり、過度な規制はしてほしくない。経済活動が制限されることのないよう対象を絞り込んでほしい」と述べた。
三村会頭は、今回のエネルギー価格高騰の背景について、「高騰しているのは石油だけでなく、LNGや石炭など広範囲に及んでおり、多重的だ」と指摘。「世界全体がカーボンニュートラルに向かう中で、化石燃料に対する設備投資が抑制され、供給能力が低下していたところに、ロシアのウクライナ侵攻が重なり、価格の上昇がさらに加速している」との見方を示した。
今後の円安と資源価格の動向については、「現時点で、ウクライナ問題が収束する見通しは全く立たない。円安と資源価格高騰はこの先も続くと考えざるを得ない」と指摘。「大半の企業がデメリットを受け続けるという事態は変わらないだろう。足元の円安が続けば大きな経営上の問題となる。中小企業の経営にとっては非常に悪い影響を与えている」と述べた。
大企業の決算発表で好業績の企業が相次いでいることについては、「心から喜んでいる。個々の企業努力に加えて、一部の輸出企業で円安のメリットが出ているためではないか」と述べるとともに、「好業績の大企業には思い切った賃上げをしてほしい」と要請。また、価格転嫁に関しては、「取引先に支払う価格も適切に引き上げ、日本経済全体にメリットを還元させるように動いてほしい」と述べるとともに、宣言企業が9千社を超えた「パートナーシップ構築宣言」や「価格交渉促進月間」などの取り組みに触れ、「円安や資源高に苦しむ企業などに、好業績企業の収益が何らかの形で還元されることを強く願っている」と述べた。
今般、成立した経済安全保障推進法の課題については、「安全保障上の必要性と経済活動の自由をどうバランスさせるか、政府にはしっかりと考えていただきたい」と要望。「経済にとって一番大切なのは自由な経済活動が担保されることだ。経済活動が制限されることのないよう対象を絞り込み、ルールを明確化してほしい」と述べ、制度の具体化に当たり、過度な規制となることを回避するよう、くぎを刺した。