徳島YEGは、古代史の見直しによる「邪馬台国は阿波だった」という説に新たな可能性を見いだした。コロナ禍でイベントの開催が制限される中、2020年から制作していた自主映画プロジェクトを実らせ、22年上映する。
イベントの替わりに自主映画を制作
本当は一体どこにあったのか、さまざまな説が唱えられ、今日まで議論が尽きない邪馬台国。徳島YEGは、新たな見解として「邪馬台国阿波説」を提唱した。これは、卑弥呼(ひみこ)が中国に献上したと魏志倭人伝に記載されている「朱」の原料「辰砂(しんしゃ)」が、徳島の地で採掘されていたことや、践祚大嘗祭(せんそだいじょうさい)において最重要な品である「麁服(あらたえ)」を古代から調進しているのが阿波忌部(いんべ)である三木家が行っていたことを根拠としている。そしてこの説にまちおこしの可能性を見いだした同YEGは、19年9月に徳島市の中心部にある藍場浜公園で「第1回卑弥呼フェス」を開催した。イベントは多くの来場者でにぎわい、継続事業として期待されたが、その後のコロナ禍により開催が危ぶまれることを察知すると、一転して自主映画の制作にシフトした。YEGによる映画の制作という取り組みについて、会長の木内崇さんに聞いた。
メインキャストは徳島出身
メインキャストとして登場する3人の女子高生役は、いずれも徳島出身。「地元に愛着のある徳島出身の人を採用したいと、オーディションを実施しました。演技経験が少なからずあることと、阿波弁を自然に話せることが決め手となりました。主人公は、運動が得意で明るく元気いっぱいでキャラクター通りになりました」
謎めくタイトル
「少女H」という映画のタイトルは複合的な意味をもっている。「Hには女王卑弥呼のH、ヒストリー(歴史)のH、そして邪馬台国阿波説の根拠である「辰砂(硫化水銀)」の元素記号であるHgSの頭文字などの意味があります」。では「少女」とは何か?「制作側、脚本家、徳島YEGでさまざまな意見交換がなされた上で決めたのですが、実際の意味合いは隠しておいた方が面白いのでは」と木内さんはニヤリ。こちらは、映画を見てのお楽しみである。
待ちに待った上映会の開催
撮影は20年8月末の5日間、オール徳島でのロケで行われた。ストーリーは、徳島の古代遺跡を女子高生が巡るというもの。「撮影クルーは東京から、また地元メディア関連の方々にもご協力いただき、もちろん徳島YEGメンバーも出演やサポートをしています。20年に完成していたのですが、その後もコロナ禍により活動自粛を余儀なくされ、22年2月にようやく完成披露上映会を開催できたときには、本当にうれしかったですね。当時全国知事会長だった飯泉嘉門徳島県知事は、実は本人役で映画にも出演されているんですよ」
新たな観光資源として徳島の魅力を全国へ発信
22年6月、阿南YEGと協力し阿南市内で「第3回卑弥呼フェス」と上映会を実施した。今後は交流のある東京商工会議所目黒支部青年部と協力し、関東での上映も予定するなど、全国展開も視野に入れている。
「さまざまな事業が制限される中で、本事業が持つ可能性に期待しています。卑弥呼・邪馬台国・古代遺跡の連携は徳島の新たな観光資源としての価値となり得るもの。「少女H」はその処女作で、これからの事業の礎になると感じています。今後はさまざまなメディアとのコラボレーションを予定しており、YouTubeなども使いながら、多くの方にこの映画を見ていただきたいと思います」。木内さんは自信と期待を語ってくれた。
作品は限られた予算と撮影期間以上のクオリティーで、撮影地である遺跡に赴いて歴史探索の旅行をしてみたいと気持ちを駆り立てる。そこにはミステリーとロマンが確かにあり、それを魅力的に描くストーリーと徳島YEGメンバーの熱い思いが歴史を動かすかもしれない。
【徳島商工会議所青年部】
会長:木内 崇
設立:1987年
会員数:171人
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