中国経済の落ち込みを示す指標が相次いでいる。4~6月の成長率は前年同期比では0・4%増とかろうじてプラスだが、日本など先進国のように前期比(季節調整済み)の年率換算ではマイナス10・0%。もちろん上海など大都市のロックダウンの影響が大きいが、コロナ感染以外の要因が表面化し始めた点に注目すべきだろう。「雇用の悪化」「不動産業の落ち込み」「企業家の投資意欲の低下」である。
雇用については日本でも報道されているように1000万人を超える大卒新卒の就職は"超々氷河期"といった状況。アリババ、テンセントなど高給で知られた民間企業は業績悪化と人員削減が続き、公務員の志願倍率が数百倍に達するケースもある。
今世紀に入ってから中国の高成長のけん引車は不動産だった。実需はなくても投資目的で買いが入り、転売で利益が上積みされる。日本のバブル期と同じ光景が4~5倍の期間続いた。ビル、高層住宅など建設工事が素材、建設業の活況を生み、住宅ローンを出す銀行も潤った。だが、習近平政権の政策もあって不動産バブルは崩壊し、1990年代の日本に近づいた。日本の円高ピークがバブル崩壊後の95年だったことと現在の人民元高が重なって見えるほどだ。
かつて「中国の経営者が2人集まれば、三つの新会社ができる」といわれるほど新規事業、新規投資に意欲的だった中国の経営者が今や「オフィスを閉じて、自宅でリモートワーク」に転換している人が少なくない。筆者の知人は「次の波が来るまで、経費を抑え、資金を温存し、冬眠する」と語る。
問題は中国経済がどれくらい「冬眠」するのかだ。少子高齢化の速度は日本を上回り、今年が人口減少の初年度になる恐れがある。子どもの数が減れば衣食住から教育、レジャーなど需要は中長期的に確実に落ちる。年金と高齢者医療が貧弱な中国では高齢者の消費意欲は低く、シルバー需要は期待できない。一方、産業では世界シェアが50%超だった鉄鋼、ガラス、セメントなどは習政権の脱炭素戦略で、設備の淘汰(とうた)が進んでいる。今なお活況なのはロシアのウクライナ侵攻で高騰した天然ガスの代替で増産が続く石炭と以前、本欄でも紹介した中国文化への回帰ともいえる「国潮」ブームの商品くらい。
中国経済の冬眠期間は2~3年では済まないだろう。コロナ後に中国人観光客が一気に来日し、爆買いするインバウンドの再来は当面は期待すべきではない。
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