肝臓は、さまざまな物質を化学的につくり変える働きをする体内最大の臓器です。その役割は主に三つあり、たんぱくの合成と栄養の貯蔵、薬や有害物質の分解と解毒、食べ物の消化に必要な胆汁の合成と分泌です。どれも体の維持に不可欠なので、肝臓が元気な状態であることは健康長寿の重要なテーマだといえます。
とはいえ、肝臓は老化していきます。加齢とともに肝細胞の数が減少し、肝臓自体が委縮してくるため、働きも低下していきます。また、日々の生活習慣も大きく影響します。例えば、過食や運動不足、内臓脂肪型肥満、過労やストレスなどが重なると脂肪肝になりやすく、肝臓に余計な負担を掛けます。そうして肝機能が低下し、障害が起こっていても、自覚症状はなかなか現れません。明らかな症状が出る頃にはすでに病気が進行してしまっている場合が多いことも肝臓の特徴で、「沈黙の臓器」と言われるゆえんです。
自分の肝臓の状態がどの程度かを知る手立ての一つが、健康診断の検査数値です。検査項目にはAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどがありますが、これらは酵素の名前です。肝細胞が壊れると血液中に酵素が流れ出るため、これらの数値が高いときは肝臓に障害が起こっていると推測されます。ちなみに、数値が正常範囲を超えた場合に疑われるのは、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、脂肪肝、肝硬変、アルコール性肝炎、肝がんなどです。また最近では、アルコール摂取に関係なく脂肪がたまる非アルコール性脂肪性肝炎が増えています。
ただし、肝臓は唯一の再生する臓器であり、軽度の障害なら壊れた肝細胞を良い状態に戻すことが可能です。その方法は、生活習慣を改めること。食事の質や過食の改善、運動の継続、疲れやストレスをためないなど、一般的な健康維持法を地道に実践することです。さらに、飲酒はしないに越したことはないですが、どうしても飲みたい場合は、1週間の飲酒量を決める、高級な酒を少し楽しむといった工夫をしてもいいでしょう。
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