政府は10月28日、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定した。対策は、財政支出で約39兆円、国と地方自治体、民間投資を合わせた事業規模は71.6兆円程度。「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を重点分野に設定し、予算・税制、規制・制度改革などあらゆる政策手段を活用した対策を速やかに実行する考えを示している。
物価高騰・賃上げへの取り組みについては、電力料金、都市ガス料金、燃料油価格の激変緩和措置、LNG安定供給体制強化、省エネ強化、中堅・中小企業などの賃上げ支援拡充、適切な価格転嫁など中小企業の賃上げ環境整備などを実施。円安を生かした地域の稼ぐ力の回復・強化に向けては、コロナ禍からの需要回復、地域活性化、重要物資の国内生産能力強化、企業の国内投資回帰と対内直接投資拡大、中小企業、農林水産物の輸出拡大など円安を生かした経済構造の強靭(きょうじん)化のための対策を盛り込んだ。
新しい資本主義の加速に向けては、人への投資と労働移動の円滑化、多様な働き方などの推進、資産所得の倍増策などを提示。成長分野における大胆な投資の促進ついては、「科学技術・イノベーション」「スタートアップの起業加速」「GX」「DX」などの分野で投資・研究開発を加速させる対策を示した。また、包摂社会の実現に向けては、少子化対策、子ども子育て世代への支援策の拡充、女性活躍推進、就職氷河期世代などへの支援策も盛り込んだ。
防災・減災、国土強靱化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全・安心の確保に向けては、ウィズコロナ下での感染症対応の強化策などを提示。経済安全保障・食料安全保障の強化に向けては、量子・AIなど先端的な重要技術育成、重要物資のサプライチェーン強靭化などの対策が盛り込まれている。
岸田文雄首相は10月28日の記者会見で、「今回の対策は、財政支出39兆円、事業規模で約72兆円、これによりGDPを4.6%押し上げる」と対策による経済効果を提示。「電気代の2割引き下げやガソリン価格の抑制などにより、消費者物価を1.2%以上引き下げる」と物価抑制の見通しも示した。
特にエネルギー価格対策については「ガソリン、灯油、電力、ガスに集中的な激変緩和措置を講じ、欧米のように10%ものインフレ状態にならないよう国民の生活を守る」と強調。これらの対策は「総額6兆円、平均的な家庭で来年前半に総額4万5000円の支援となる」と述べた。
詳細は、https://www.kantei.go.jp/jp/keizaitaisaku_kishida/index.htmlを参照。
総合経済対策の規模と効果など
【財政支出】 39.0兆円程度
【事業規模】 71.6兆円程度
【直接的なGDP押し上げ効果】 4.6%程度(実質GDP換算)
【物価抑制効果】 1.2%pt程度以上(消費者物価[総合])
物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策
<主な施策>
Ⅰ.物価高騰・賃上げへの取り組み
1.エネルギー・食料品などの価格高騰により厳しい状況にある生活者・事業者への支援
2.エネルギー・食料品などの危機に強い経済構造への転換
3.継続的な賃上げの促進・中小企業支援
Ⅱ.円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
1.コロナ禍からの需要回復、地域活性化
2.円安を活かした経済構造の強靱化
Ⅲ.「新しい資本主義」の加速
1.「人への投資」の抜本強化と成長分野への労働移動:構造的賃上げに向けた一体改革
2.成長分野における大胆な投資の促進
3.包摂社会の実現
Ⅳ.防災・減災、国土強靱化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全・安心の確保
1.ウィズコロナ下での感染症対応の強化
2.防災・減災、国土強靱化の推進
3.自然災害からの復旧・復興の加速
4.外交・安全保障環境の変化への対応
5.国民の安全・安心の確保
Ⅴ.今後の備え