日本商工会議所の小林健会頭は12月6日、定例の記者会見で、「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業数の増加と実効性向上による取引適正化に向け「商工会議所のエネルギーを集中して、大精力を注ぐ」との考えを表明した。中小企業の価格転嫁の状況については、「完全な転嫁には至っていない」と指摘。「パートナーシップ構築宣言運動を契機に、大企業と中小企業との取引が適正化し、中小企業が賃上げ原資を確保することができる」との考えを改めて示した。
小林会頭は、労働分配率が7~8割と付加価値に占める人件費の割合は既に極めて高い中小企業の賃上げ原資を確保するため、付加価値の拡大による生産性向上が必要との考えを示し、「企業の生死を分ける重要なポイントだ」と強調。生産性向上に向けては「コスト削減も必要だが、取引価格の適正化による付加価値の拡大が重要」と指摘した。
大企業と中小企業の価格交渉については、都内で対話した中小企業経営者から、「『話は聞いてくれるが、購買担当者で止まってしまい、経営トップまで届かない』『原材料の値上がり分は交渉の余地があるが、光熱費は対象外と言われた』といった切実な声が聞かれた」と指摘。また、日商のLOBO調査11月の調査結果で、発注側企業との価格交渉について、「協議できている」と回答した企業が増えている一方で、価格転嫁については「全くできていない」「一部できていない」との回答が8割を超えるなど遅れている点に触れ、「価格交渉は一歩踏み出しているが、取引価格の完全な転嫁には至っていない」と述べた。
宣言企業数が1万6700社を超えた「パートナーシップ構築宣言」については、今後も企業数の増加と実効性も高めていく考えを表明。「大企業の知り合いに直接掛け合うことも考えており、商工会議所のエネルギーを集中して、大精力を注いで進めていこうと考えている」と意欲を示した。
原子力政策については、大幅に値上がりしている電気料金とともに、ひっ迫が懸念されている電力需給の問題に触れ、「エネルギーの安定供給を考えると、安全性を最優先に、原発を再稼働することが急務だと認識している」と強調。国の方針として、既設炉を最大限活用することや、次世代革新炉の開発・建設を促進することなどが示されたことについては「われわれが要望し続けてきた内容であり、高く評価したい」と述べた。
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