日本商工会議所の小林健会頭は2日、定例の記者会見で、女性の就労抑制につながっているとされる「130万円の壁」問題について、「制度が現実の社会と合っていないのであれば、適切に見直すことが必要だ」と述べた。導入が決まったカーボンプライシング制度については、「脱炭素に向けた具体的な取り組みの中で、中小企業に過度な負担を強いることがないようにしてほしい」と強調。中小企業の賃上げについては、その原資確保のために、下請企業やBC企業に対して、「値上げする勇気を持ってほしいと呼び掛けたい」と述べた。
小林会頭は、岸田首相が、女性の就労抑制につながる「年収130万円の壁」問題について制度の見直しに言及したことについて、「働き方改革が進み、より多くの女性がより長く働くことができる環境を整備することが重要だ」と強調。「年 収の壁前後で働く方々、特に女性の働き方改革は、中小企業、ひいては日本全体にとって重要なテーマだ」と述べた。
また、就業調整の問題について「中小企業からは、この壁が労働者自身の就業調整、保険料を折半して負担する使用者側の雇用調整の大きな要因となっているとの声がある」と指摘。共働き世帯との公平性を確保するために、第三号被保険者制 度については廃止を含め抜本的な見直しを行うべきとの従来の日商の主張に触れ、「制度が現実の社会と合っていないのであれば、適切に見直すことが必要だ。そのためにも、政策提言を継続したい」と述べた。
具体的な解決の方向については、「多くの人が納得できる解を見いださなければならない」と述べ、国会での論戦に期待を表明。「補助金などによるバラマキではなく財政支出全般に関する徹底したワイズスペンディングの実践が必要だ」と強調した。
政府が導入を決めたカーボンプライシング制度については、「脱炭素化と経済成長を同時実現する上で、カーボンプライシングは重要な役割を果たす」との考えを表明。一方で、カーボンニュートラルに向けた中小企業の取り組みについては、 「残念ながら、もう少し時間がかかる。脱炭素社会への移行に向けた具体的な取り組みの中で、中小企業に過度な負担を強いることがないようにしてほしい」と述べ、個々の企業の実情や業界の特性に合わせた対応、経営資源に乏しい中小企業 が必要な準備ができるような支援が必要との見方を示した。
中小企業の賃上げについては、「業種・業界によって状況は随分違うと実感している」と述べるとともに、「中小企業平均として何%の賃上げを目指すかというのはあまり意味のある議論ではない」と指摘。商工会議所としては、「賃上げできる企業には『賃上げをしてほしい』と、下請企業やBtoC企業には、「賃上げ原資確保のために『値上げする勇気を持ってほしい』と呼び掛けたい」と述べた。 また、「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上のために1月に実施した経済三団体連名の要請について「全体に働きかけることも大切だが、その業界特有の問題もある」と指摘。運動が広がりを持つためには、関係省庁や地方自治体などの取り組みの重要性も強調した。
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