佐賀県鳥栖市は、南北を横断する国道3号が通り、高速道路のジャンクションや九州新幹線・在来線の分岐点を市内に持つ陸路交通の要衝であり、古くから企業の工場や倉庫、物流拠点が立ち並ぶ九州有数の工業都市だ。また、県内で最も人口密度が高い都市であり、昭和29年の市制施行以来、定住人口が増え続けている。一方、観光名所や名物と言えるものがないため、交流人口の少なさが課題となっている。地域活性の一翼を担う鳥栖YEGはこの状況にどう挑むのか、その思いの核心に迫る。
垣根を越えた交流がにぎわいをもたらす
「鳥栖は農業産出額が市内生産額の1%以下で、これといった名産品や名物料理がなく、観光資源も少ないのでPRできるものがないんですよね」
そう自嘲気味に語ってくれたのは鳥栖YEG会長の野田哲郎さん。同会はどんな活動をしているのだろうか。
鳥栖YEGでは、異業種交流会や各種の研修事業、県や九州ブロックとの交流が盛んで、地域イベントの盛り上げに積極的だという。地域の魅力を謙虚に捉えながら、青年経済団体としての活動をしている。
「毎年7月の最終日曜に行われるイベント『まつり鳥栖』では、商店街を歩行者天国にして、露天やステージイベント、パレード、バザーなどを開催しています。昭和49年から続く歴史ある夏祭りで、鳥栖市や奉仕団体、商店街組合、YEGなどの青年経済団体がそれぞれの役割を担当しています。諸団体が一丸となって協力体制を築いていることは、団体の垣根を越えて交流をすることが、まちを盛り上げるということを実感しているからではないでしょうか」と祭りの意義を説明する野田さん。「YEGでは本年度、地元の食肉・食品製造業者の協力を得て、県銘柄鶏の「みつせ鶏」のつくねで名産品のアスパラガスを包んだ『鳥栖ドッグ』を販売しました。昼過ぎには300食が完売するほどで、今後の鳥栖の新たな地元グルメとして、地産地消もアピールできるものだと確信しています」
継続への葛藤と新たな事業の創造
鳥栖YEGは、2008年から市の中央公園でイルミネーションイベント「ハートライトフェスタ」を主催している。11月末から1カ月間、公園を20万球を超えるイルミネーションで飾り付けるもので、点灯式やステージイベントをあわせ10万人を超える来場者を集める、まちの冬の風物詩となっている。だが、この取り組みは、同会のゴールではない。
「成功を喜びながらも、同じ事業を続けるだけでなく、もっと組織の存在意義の核心に迫るような新しい事業、新たな観光産業を創出したいという思いを抱くようになったのです。そこで本年度から『ハートライトフェスタ』は親会とYEGのOBの一般社団法人に主催を移管し、3月5日に『鳥フェス~鳥栖のみんなで!鳥にまつわる!鳥栖のフェス!~』と題したイベントを企画しています。『鳥栖ドッグ』の販売をはじめ、鳥栖にある企業や店舗を市内外へアピールし、交流を促進することが目的です」
今、できることをやる
鳥栖YEGは活動の幅をさらに広げ、行政との意見交換をしたり、TV番組に出演してまちのPRを行ったりしている。最後にこれからの活動について聞くと、「鳥栖YEGは会員数が決して多い単会ではありませんが、会議の終了時間を超過して激論を交わすことも多々あるほど、まちへの情熱にあふれています。これからもYEGのスケールメリットを活用し、さまざまな人や団体との交流を深めて鳥栖のためにできることを模索し続けます」と、野田会長は力強く語った。
【鳥栖商工会議所青年部】
会長 : 野田哲郎
設立 : 1994年
会員数 : 44人
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