製造業のIoT導入が叫ばれているが、資金や効果の面から不安も多く未だ導入に二の足を踏んでいる中小製造業は多い。そこで、一足早くIoTを導入し、人手不足解消と効率化に大きな成果を上げている二つの企業を実例として紹介したい。
低下を続ける中小企業の生産性を改善
モノのインターネットと呼ばれるIoT(Internet of things)。その導入目的の一例は、機械設備に取り付けた各種センサーから取得したデータをネットワーク経由で収集・分析し、生産性の向上に役立て、付加価値の高いサービスとして活用することである。
労働力不足が深刻化する中で、大手製造業は生産性を向上させているが、中小製造業は逆に悪化している。その状況は中小企業庁がまとめた「IT導入支援とIoTの可能性について」という資料を見ると明らかだ。大企業と中小企業の従業員1人当たり付加価値額を平成8年から26年の18年間で比較すると、大企業製造業は14・3%増加させたのに対し、中小企業では10・3%も減少している。しかも両者の生産性の差は拡大する一方だ。そこで、中小企業製造業の生産性向上に寄与する手段として、IoTが期待されている。
では導入企業は、IoTをどのように活用しているのだろう。経済産業省「平成28年度ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)」にある「従業員規模別のIoT等の技術の活用状況」を見ると、活用が進んでいる分野と遅れている分野に大きな差があることが分かる。
また従業員300人以下の企業は、300人超の企業に比べて、生産分野の「生産工程全般や個別工程の見える化」と、設計・開発分野の「生産時に判明した設計開発の不具合のフィードバックの活用」が遅れていることも明らかだ。
本特集で紹介する2社のIoTシステムは、見える化とフィードバックに関して強みを持ち、大きな成果を上げている。さらにシステムを低コストで自社開発し、外販しているという共通点もある。
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