中小企業庁は4月28日、同日閣議決定された2023年版中小企業白書と小規模企業白書を取りまとめ、公表した。今年の白書では、中小企業・小規模事業者の動向に加えて、中小企業が変革の好機を捉えて成長を遂げるために必要な取り組みや、小規模事業者が地域課題を解決し、持続的な発展を遂げるために必要な取り組みなどについて、企業事例を交えて分析。取引適正化などを通じた価格転嫁力の向上については、労務費やエネルギー価格の転嫁に課題があることから、「価格転嫁を取引慣行として定着させることが重要」と強調した。
中小企業白書では、企業の中長期的な成長に向けて、競合他社と異なる価値を創出するための「戦略」と、構想と実行の核である「経営者」に着目。戦略については、「競合他社と異なる価値創出の在り方を反映した戦略の構想や実行を通じて差別化を図ることが重要」と強調した。
経営者については、「企業の戦略構想・実行力を支え、成長を促す外部プレーヤーの存在が重要な実例も存在する」と指摘。「経営者仲間との積極的な交流を通じて、企業の成 長意欲を喚起していくことも重要」との考えを示した。
価値創出のための戦略実現に向けては、「経営者を支える内部資源(リソース)・体制の充実も重要な要素」と強調。「人材戦略の策定やエクイティ・ファイナンスの活用に向けたガバナンスの構築・強化は、こうした戦略実現に資する人材や資金の獲得を促す手段となる」と分析している。
事業承継・M&Aについては、「経営資源の散逸を防ぐとともに、経営者の世代交代を通じた企業変革の好機」と指摘。「若い後継者ほど、新しい商品・サービスの提供といった事業再構築に取り組んでいる」傾向などを示している。
小規模企業白書では、ソーシャルビジネスを通じた地域課題解決などを取り上げた。「地域の社会課題解決に事業の一環で取り組む事業者は今後も増加が予想され、自治体による事業者への期待も高まっている」との見方を提示。「地域課題解決に持続的に取り組む上で、事業の社会的意義(ソーシャルインパクト)の検討・提示や複数地域への展開は、収支の確保や円滑な資金調達の観点から重要」と指摘した。
両白書では、中小企業・小規模事業者の共通基盤として、「中小企業・小規模事業者の取引適正化に向け、『価格交渉促進月間』の実施とその結果を踏まえた情報の公表や親 事業者の経営陣に対する指導・助言などの実施が必要」と指摘。中小企業支援機関については、「支援実績などの見える化を進め、支援機関同士の連携・切磋琢磨を促すことが重要」との見方を示すとともに、経営力再構築伴走支援では、「全国的に取り組みが進展しており、より支援の効果を高めるためにも、支援ノウハウの蓄積や支援機関内の相談員の能力向上が必要」と強調している。
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