いちき串木野市は鹿児島県西部に位置し、古くから金鉱業と遠洋まぐろ漁業のまちとして栄えてきた。現在では本格芋焼酎や、さつま揚げの本場としても名高い。また、現代日本の礎を築いた五代友厚らを中心とした薩摩藩英国留学生が旅立った歴史ある土地でもある。一方、近年では人口減少による労働力不足や事業所の後継者不足などの問題も抱えている。地域活性化の一翼を担う青年経済団体としてどのように問題に立ち向かったのか。いちき串木野YEGにその思いを聞く。
企業と求職者を結ぶ
「メンバーとの交流中に『働き手がいなくて仕事が回らない』『労働力がもっとあれば事業拡大ができるのに』という意見を多くのメンバーから聞き、プランを立てた」と熱い眼差しで語ってくれた2022年度いちき串木野YEG会長の須納瀬武典さん。会長職を務めるに当たり、2年ほど前から「労働者不足解消のための事業」の構想を練っていた。
同YEGでは各年度、会長の方針で地域貢献のための事業を行っている。過去にも交流人口増加のための事業を数多く行ってきた。
しかし、須納瀬さんの考えた事業は今までとは違う「労働者不足の解消に向けた事業」であった。「地域の祭りももちろん大事ですし、地域活性化に一役買っているのは間違いない」としつつ、「でも青年経済団体として自社や市内事業所のプラスになる事業がしたかった」と語る。その思いは『ワクワク人財発掘プロジェクト』という名で、22年度のメイン事業として開催されることとなった。
企業説明会をメインとする四つの事業を通じて企業と求職者をつなぐ
今回のプロジェクトは、人手不足が経営者にとって大きな課題となる中、市内企業の悩み解決や、年間を通じた雇用に対する意識の高揚を目的に初めて開催した。
まず『【中小企業向けの雇用対策】~人材不足の処方箋~』と銘打って、合同企業説明会の事前講習という位置付けの下、事業者向けの講演会を行い、日頃の求人活動のコツや企業説明会でのポイントなどを細かく説明した。
次に企業紹介動画を作成。ここでは市内九つの企業が参加し、出来上がった動画を企業説明会で上映した。また市役所や観光施設・銀行などで一定期間上映し、DVDに焼き増ししたものを近隣高校へ配布。さらにYouTubeで公開するなど、将来のための新卒者や即戦力の確保に取り組んだ。
そして、メイン事業である企業説明会は、建設業、製造業など市内に本社や営業所を置く企業23社が参加し、地元で働く魅力について発信した。近隣高校への声掛けや同市立ハローワークとも連携し、市内の求人者・子育て支援センターの女性登録者など幅広く参加を呼び掛け、当日は約50人の参加者が集まった。参加者は各々興味のある企業ブースを訪れ、熱心に説明に耳を傾けていた。
最後に職場見学会。こちらは市内在学の高校2年生を対象に、市内6事業所を見学して回った。各企業の説明を聞いた参加者からは、「将来の参考になった」「地元に就職したい」といった声も聞かれ、高校生に対して進路への良い判断材料になったのではないだろうか。
このプロジェクトについて須納瀬さんは「地元にも素晴らしい技術を持った企業が多い。一人でも多くの雇用が生まれることを期待したい」と話した。
地域に必要とされるYEGへ
同YEGの会員は35人と少ない。しかしながら、地域の祭りの運営や補助などの要望も多く、「YEGならやってくれるだろう」といった期待も感じるという。また最近では、政策提言活動にも力を入れている。
「メンバー一人一人の熱い思いを、そして心を一つにして事業を成し遂げよう」の思いで、宮之原正敏さんに会長のバトンをつなぎ、23年度もすでに動き出している。「青年経済人として、一市民として、自分たちに何ができるのか、何をやらねばならないのかを、これからのYEG活動を通じてしっかりと考え、楽しみながら活動していきたいと思います」と須納瀬さんは力強く語ってくれた。
【いちき串木野商工会議所青年部】
会長 : 宮之原 正敏
設立 : 1987年
会員数 : 35人
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