中小企業庁は6月20日、原材料費やエネルギー価格、労務費などの上昇分を、発注元企業に適切に価格転嫁しやすい環境を整備するために、今年3月に実施した「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果を公表した。アンケート調査の調査期間は4月7日~5月31日で回答企業数は1万7292社(回答から抽出される発注側企業数は延べ2万722社)で、下請Gメンによるヒアリング調査(電話調査)は4月17日~28日でヒアリング件数は2243社。ヒアリング先は、地域や業種のバランスを考慮し、過去にヒアリングを実施した事業者から選定するとともに、過去のヒアリングでコストが価格に反映できていない状況や十分に価格交渉が行われていない状況などが見られた事業者を優先して選定している。
直近6カ月間の価格交渉協議について、「価格交渉を申し入れて応じてもらえた」「発注側からの声掛けで交渉できた」割合は前回調査(昨年9月)より増加(58.4%→63.44%)。一方、「発注側から交渉の申し入れがなかった」「協議に応じてもらえなかった」「減額のために協議申し入れがあった」が依然として約16%あり、二極化が進行している。
コスト上昇分を価格転嫁できている割合は47.6%で前回の9月調査(46.9%)に比べて微増。10割価格転嫁できている企業は20.6%、9~7割は18.7%、6~4割は10.5%、3~1割は18.3%だった。他方、「全く転嫁できない」「減額された」割合は23.5%(前回調査20.3%)で二極化の傾向が見られる。
価格交渉の状況を業種別に見ると「造船」「繊維」「食品製造」「飲食サービス」「建材・住宅設備」で相対的に協議ができている一方で、「通信」「トラック運送」「放送コンテンツ」「広告」「金融・保険」では協議に応じない発注側企業が多い。価格転嫁の状況は、「石油製品・石炭製品製造」「卸売」「造船」などの業種で転嫁の状況が良く、「トラック運送」「放送コンテンツ」「通信」などの業種がコスト増に対する転嫁率が低い結果となっている。
今回は「賃上げ率」も照会しており、価格転嫁と賃上げの関係を整理。価格転嫁できている割合が高くなるほど、賃上げ率も高くなる傾向が確認された。
中小企業庁では、今回の調査結果で価格転嫁できた企業の多くが「原価を示した価格交渉」が有効と回答していることから、7月から、全国のよろず支援拠点に「価格転嫁サポート窓口」を設置。中小企業などに対する価格転嫁価格交渉に関する基礎的な知識の習得支援や原価計算の手法の習得支援を実施する。また、商工会議所などの地域支援機関に対して、価格交渉ハンドブックを配布。価格転嫁に関する基本的な知識の習得支援などを行うことで、全国的に中小企業の価格転嫁を支援する体制を整備する。
8月以降は、発注側企業ごとの価格交渉・転嫁状況のリストを公表。下請振興法に基づき、事業所管大臣名で経営トップに対して指導・助言も行う。また、引き続き、各業界団体による自主行動計画の改訂・徹底、公正取引委員会と合同で各業界団体による取引適正化の取り組み状況のフォローアップも行う。
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